運用力を鍛える英文法基礎【第3回】

英文法

運用力を鍛える英文法

大学別の個別試験のような記述形式の試験では、いくら知識があっても、その運用力がなければ上手くいきません。センター試験から共通テストに変わって、思考力・表現力・判断力を問われる問題がより一層増えることが考えられます。

これからの受験生にとって、運用力は大切な能力となるでしょう。応用力のある人は、知識を適切に運用できる運用力をもつ人のことです。たくさんの知識を蓄え、それを適切に運用できる応用力のある人になりましょう!

文法的に誤りのある英文を訂正してみよう

次の英文は、問題のない英文に見えます。しかし、文法的な誤りがあります。どこに文法的な誤りがあるのか分かるでしょうか。また、文法的に正しい英文に訂正できるでしょうか。

【問3】日本語訳を参考に、次の英文の文法的な誤りを直しなさい。

Don’t forget locking the door behind you.

「あなたの後ろの扉の鍵をかけるのを忘れないでください」

※英文には文法的な誤りがあります

誤文訂正に必要な知識

少なくともこの問題を解くのに必要な知識は以下の通りです。

  • 不定詞と動名詞
  • 不定詞または動名詞だけを目的語(O)にとる動詞
  • 受け身の意味を表す動名詞

不定詞と動名詞

英文の要素の1つに目的語(O)があります。目的語(O)は、他動詞(Vt)の動作や行為の対象となる語句のことです。

目的語(O)となるものには、名詞代名詞、そして名詞に相当する語句などがあります。名詞に相当する句のことを名詞句、名詞に相当する節のことを名詞節と言います。

目的語(O)になるもの

名詞・代名詞・名詞句・名詞節

ここでは、名詞句となる語句を扱います。名詞句となるものには、不定詞動名詞などがあります。

不定詞や動名詞は、動詞を用いた句です。不定詞、動名詞、分詞(現在分詞・過去分詞)の3つは準動詞と言われます。準動詞は、2つの特徴を持っています。

準動詞の特徴

  • 動詞の他に名詞や形容詞などの働きもする
  • 主語の人称や数によって変化しない

不定詞と動名詞の意味の違い

不定詞や動名詞がどちらも名詞と相等の働きができるのであれば、名詞句を作るのにどちらを用いても問題なさそうな気がします。しかし、2つの違いを知れば、使い分けなければならないことが分かります。

2つの英文の意味の違いが分かるでしょうか。

不定詞と動名詞の違い

a) I forgot to meet her.

b) I forgot meeting her.

どちらも第3文型(SVO)の英文です。2つの英文に文法的な誤りはありませんが、英文の意味が異なります。

不定詞と動名詞の違い

a) の要素

I / forgot / to meet her.

私は / 忘れた / 彼女と会うことを

  • S+Vt+O:第3文型(SVO)
  • 主語(S):I
  • 述語動詞(Vt):forgot
  • 目的語(O):to meet her【不定詞句・名詞的用法】

b) の要素

I / forgot / meeting her.

私は / 忘れた / 彼女と会ったことを

  • S+Vt+O:第3文型(SVO)
  • 主語(S):I
  • 述語動詞(Vt):forgot
  • 目的語(O):meeting her【動名詞句】

a) は「これから会うのをし忘れた」という意味で、彼女にはまだ会っていません。b) は「会ったという事実を忘れた」という意味で、彼女にはすでに会っています。彼女に会っている場合と会っていない場合とでは全く意味が異なります。

不定詞の「to」は、もともと方向を示す前置詞です。ですから、今でも不定詞は、これからある行動をとろう、ある状態になろうという、未来志向の積極的意図を示す動詞に付く傾向があります。

不定詞をとる動詞の傾向
  • to+[ 未来志向の積極的意図を示す動詞 ] ⇒ 不定詞
  • 不定詞を用いた表現「未来志向的」

それに対して動名詞は、現在またはこれまでに事実となっていることにどう対処するかということを示す動詞に付く傾向があります。これからのことよりも、すでに起こったことや当面の事柄にどう対処するかという意味合いが強くなるので、動名詞は消極的、回避的なことを言うときに好まれる表現です。

動名詞をとる動詞の傾向
  • [ 現在またはこれまでに事実となっていることにどう対処するかということを示す動詞 ]+ing ⇒ 動名詞
  • 動名詞を用いた表現「事実志向的」

このような違いから、不定詞が動的であるのに対して、動名詞は静的と捉えることができます。傾向ではありますが、迷ったときの目安にはなるでしょう。