運用力を鍛える英文法基礎【第4回】

英文法

運用力を鍛える英文法

問4の訂正例

【問4】日本語訳を参考に、次の英文の文法的な誤りを直しなさい。

I object to wait any more.

「私はこれ以上待つのには反対です」

※英文には文法的な誤りがあります

問4の英文では、述語動詞(V)は「object」です。object は、自動詞(Vi)では「(…に)反対する」の意味で用いられ、他動詞(Vt)では「~と言って反対する」の意味で用いられます。

自動詞(Vi)の場合、異議を唱える対象を前置詞句で表します。また、他動詞(Vt)の場合、一般に、反対して言う内容を名詞節(that 節)で表します。

object の用法
  • 自動詞(Vi):object+前置詞句【前置詞句=異議を唱える対象】
  • 他動詞(Vt):object+名詞節(that 節)【名詞節=反対して言う内容】

ここでは object の後ろに to があり、また日本語訳が「~に反対する」とあるので、自動詞(Vi)として用いられていると考えられます。

問4の英文を文法的に正しい英文に直すと以下のようになります。

問4の訂正例

× I object to wait any more.

〇 I object to waiting any more.

「私はこれ以上待つのには反対です」

述語動詞(V)には、動詞「object」が自動詞(Vi)として用いられています。その後ろには前置詞句が続くので、to は前置詞です。そして、前置詞の後ろには、名詞やそれに相当する語句が続くので、動詞「wait」は動名詞「waiting」にします。

訂正例の要素を考えると、以下のようになります。

訂正例の要素

I / object / ( to waiting ( any more ) ).

私は/ 反対です /((これ以上)待つことに対して)

  • S+Vi+(M):第1文型(SV)+(M)
  • 主語(S):I
  • 述語動詞(Vi):object
  • 副詞的修飾句(M):to waiting ( any more )【object を修飾】
  • 副詞的修飾句(M):any more【waiting を修飾】

前置詞句は、句全体で述語動詞(V)を修飾する副詞句として働いています。また、前置詞句だけに注目すると、any more は waiting を修飾する副詞句として働いています。

英文を読むときにしたいこと

問4の英文の構造を考えてみましょう。

形容詞や副詞による修飾部分は英文の要素になりません。英文として必要な要素だけを残すと「I object.」となり、構造が単純な第1文型(SV)であることが分かります。

この第1文型(SV)に、修飾部分「to wait any more」が述語動詞「object」を修飾する形で加わります。日本語訳でも同じようにして、修飾部分の日本語訳は後から付け加えた方が読みやすいです。

英文の構造から日本語訳を考える

I object to waiting any more.

①要素分解

I / object / ( to waiting ( any more ) ).

⇒ object は自動詞(Vi)だから、以降は前置詞句(副詞句)

⇒ 前置詞句の中に副詞句 any more あり

②修飾部分を除外して、文型把握と日本語訳

I / object / .【第1文型(SV)】

私は / 反対です

③修飾部分を補完

I / object / ( to waiting ( any more ) ).【第1文型(SV)+(M)】

私は / 反対です /(待つことに対して(これ以上))

④日本語らしい訳

I / object / ( to waiting ( any more ) ).【第1文型(SV)+(M)】

私は /( (これ以上) 待つことに)/ 反対です

回りくどいやり方だと感じるかも知れません。しかし、入試レベルの複雑な構造をもつ英文になるほど、このような手続きが必要です。単語の意味をつないで日本語訳を考えるやり方では、英文法の知識を大して使いません。これではいつまで経っても、英文法の知識を上手に運用できるようにはならないでしょう。

上述のような手順をこなすためには、文法の知識はもちろんですが、単語の意味だけなく、品詞語法などの知識も必要です。本当の意味で総合力を付けることができます。

ただし、初見の英文では難しいので、すでに日本語訳を知っている英文で取り組むのが適切です。ですから、復習のときに行うと良いでしょう。また、英作文の対策にも効果が見込めるので、コツコツ取り組みましょう。

英文を読んだり書いたりするときにしたいこと

  • 英文の要素と修飾部分(形容詞や副詞、それらに相当する語句)を区別する
  • 修飾部分を除き、残った要素で英文の構造や日本語訳を考える
  • 除外した修飾部分を補って、日本語訳を補完する

動名詞を用いた慣用表現(to+動名詞)

すでに不定詞句と間違いやすい動名詞句を紹介しましたが、最後にまとめておきます。to は前置詞です。不定詞と混同しないように注意しましょう。

動名詞を用いた慣用表現(to+動名詞)
  • look forward to doing「~するのを楽しみに待つ」(= expect, anticipate)
  • devote oneself to doing「~することに専心する」
  • be opposed to doing「~することに反対している」
  • object to doing「~することに反対する」(= oppose)
  • be used to doing「~することに慣れている」
  • get used to doing「~することに慣れる」
  • be accustomed to doing「~することに慣れている」
  • when it comes to doing「~することに関しては(~することになると)」
  • What do you say to doing?「~してはどうですか(~しませんか)」(= How [ What ] about doing?)

第3回と第4回のまとめ

第3回と第4回には共通のテーマがあります。動詞と文型の関係の中でも「他動詞と目的語の関係を知る」ということです。

知識が定着しているかの確認のために、以下の事柄について確認しましょう。

  • 不定詞と動名詞の違い【第3回】
  • 不定詞または動名詞だけを目的語にとる動詞【第3回】
  • 受け身(受動)の意味を表す動詞【第3回】
  • 不定詞句と前置詞句( to を用いた表現)【第4回】
  • 不定詞句と間違いやすい動名詞句【第4回】

他にも色々ありましたが、テーマに沿った内容が定着していれば最初のステップはクリアしたと考えて良いでしょう。

もう英文作成で悩まない!120万例文と用例の「英辞郎 on the WEB Pro」

お勧めの学習教材|英語嫌いや英文法初学者に優しい英語入門シリーズ

文型や語法についての解説がある辞書を使おう

文法の知識は文法書で身に付けられますが、あくまでも原理原則です。個別の単語については説明不足の場合があります。そんなときに辞書があります。

辞書にも扱いやすいものとそうでないものがあります。それは個々人がもつ知識の量が原因です。高校英語の初学者だと、十分な語彙力とは言えないので、できるだけ多くの情報をまとめた辞書を持った方が無難です。

初学者にお勧めの辞書は『ライトハウス英和辞典』です。慣れもあるかもしれませんが、レイアウトがすっきりしていて、とにかく読みやすい辞書です。

ライトハウス英和辞典の内容一覧
公式サイト:研究社

語義、熟語、語法なとが分かりやすくまとめてあります。また、類義語との比較もまとめてあるので、細かなニュアンスの違いも知ることができます。

使っていて特に助かるのは、動詞の場合、例文と合わせて文型が示してあることです。 意味に合わせて文型が分かるので、単語の意味を覚えるだけにはなりません。 辞書によっては文型が示されていないので、自分で考えることになります。

個人的には『ライトハウス英和辞典』で必要十分だと思いますが、他の辞書にも独自の良さがあります。自分好みのレイアウトや、収録内容などをよく吟味して購入しましょう。

『コンパスローズ英和辞典』には文型の情報がありませんが、実用的な辞書だと思います。