運用力を鍛える英文法基礎【第8回】

英文法

運用力を鍛える英文法

大学別の個別試験のような記述形式の試験では、いくら知識があっても、その運用力がなければ上手くいきません。センター試験から共通テストに変わって、思考力・表現力・判断力を問われる問題がより一層増えることが考えられます。

これからの受験生にとって、運用力は大切な能力となるでしょう。応用力のある人は、知識を適切に運用できる運用力をもつ人のことです。たくさんの知識を蓄え、それを適切に運用できる応用力のある人になりましょう!

文法的に誤りのある英文を訂正してみよう

次の英文は、問題のない英文に見えます。しかし、文法的な誤りがあります。どこに文法的な誤りがあるのか分かるでしょうか。また、文法的に正しい英文に訂正できるでしょうか。

【問8】日本語訳を参考に、次の英文の文法的な誤りを直しなさい。

I was made apologize when I was seen beating my brother.

「弟をたたいているのを見られて、謝らされた。」

※英文には文法的な誤りがあります

誤文訂正に必要な知識

少なくともこの問題を解くのに必要な知識は以下の通りです。

  • 使役動詞
  • 知覚動詞
  • 使役動詞や知覚動詞の受動態

使役動詞

使役動詞とは、「目的語(O)に~させる」という意味を表す動詞のことです。この意味を表す動詞であれば、allow や cause などたくさんあります。

しかし、一般に使役動詞と言う場合、狭い範囲で、「make, let, have, get」の4つを指すことがほとんどです。

使役動詞

一般に make, let, have, get の4つ。

使役動詞は、ふつう第5文型(SVOC)をとります。一般に、第5文型(SVOC)の補語(C)には、不定詞や分詞(現在分詞・過去分詞)などの準動詞をとることができます。しかし、使役動詞や知覚動詞を使った表現では、不定詞に注意が必要です。

使役動詞「make」

動詞「make」が使役動詞として用いられる場合、「(無理にでも強制的に)~させる」という意味を表します。使役動詞「make」は、目的語(O)の次に動詞の原形をとります。

第5文型(SVOC)の補語(C)に、to 不定詞句ではなく、動詞の原形から始まる句をとります。to 不定詞から to が取れて動詞の原形だけになった形を、原形不定詞と言います。

原形不定詞

to 不定詞から to が取れて、動詞の原形だけになった形

使役動詞「make」を用いた文の一例です。

make +目的語(O)+原形不定詞

They made me repeat the whole story.

「彼らは私にその話を全部繰り返させた」

例文の要素

They / made / me / repeat the whole story.

彼らは / 私が / その話を全部繰り返すことを / 強制した

  • S+Vt+O+C:第5文型(SVOC)
  • 主語(S):They
  • 述語動詞(Vt):made【使役動詞】
  • 目的語(O):me
  • 補語(C):repeat the whole story【原形不定詞句】

使役動詞「let」

動詞「let」が使役動詞として用いられる場合、「(相手がしたがっていることを)~させてやる」という意味を表します。使役動詞「let」も、目的語(O)の次に動詞の原形をとります。

let +目的語(O)+原形不定詞

Her parents won’t let her go out with her boyfriend.

「彼女の両親は、彼女にボーイフレンドとデートをさせてくれない」

例文の要素

Her parents / won’t let / her / go out ( with her boyfriend ).

彼女の両親は / 彼女が /(ボーイフレンドと)外出することを / させてやらない

  • S+Vt+O+C:第5文型(SVOC)
  • 主語(S):Her parents
  • 述語動詞(Vt):won’t let【使役動詞】
  • 目的語(O):me
  • 補語(C):go out ( with her boyfriend )【原形不定詞句】
  • 副詞的修飾句:with her boyfriend【go out を修飾】

「let」の慣用表現

動詞「let」は go などの単音節の動詞と結びついて、「let go(放す)」などの慣用句を作って、句動詞として働く形があります。

let の慣用表現

Let go (of) the rope and I will catch you —— you won’t get hurt.

「ロープを放しなさい。そうすれば受け止めてあげる。けがはしないから」

この慣用表現でも目的語(O)が代名詞の場合、「let it go」の語順になるので注意しましょう。特に「Let me+原形不定詞」の形は会話でよく使われます。そのまま覚えておくと便利です。

「Let me +原形不定詞」の表現

  • Let me introduce myself.(自己紹介をさせて下さい)
  • Let me have a look at it.(ちょっとそれを見せてよ)
  • Let me tell you something.(ひとこと言っておくよ)
  • Let me see. ≒ Let’s see.(ええと…)〔seeは「考える」の意味〕
  • Let’s go. = Let us go.(「私たちを行かせて下さい」がもとの意味)

また、「let go」は自動詞として、「let go of」は他動詞として用いられ、「let go of」の方が多く使用されます。この種の動詞には次のようなものがあります。

「let +原形不定詞+目的語(O)」の形をとる動詞
  • let drop(落とす)
  • let fall(落とす)
  • let go (of)(放す)
  • let pass(見逃す)
  • let slip(うっかり口外する)

「let」とその類義語

let の類義語に、make, allow, admit, permit などがあります。意味はそれなりに異なります。

「let」の類義語

  • let:くだけた感じの語で、積極的にさせるというよりも、むしろ反対や禁止はせずに「(本人の望み通りに)させる」とか、また時には不注意や怠慢でそうさせるという意味。
  • make:普通は相手の意思にかかわらず「むりやり~させる」の意味。
  • allow:禁止しない、あるいは黙認するという意味で、letとほぼ同じ。
  • permit:やや格式ばった語で、積極的にはっきりと許可を与えるという意味。

例文で意味の違いを確認しましょう。

「let」とその類義語

a) He wanted to go, and his father let him (go).

「彼は行きたがったので、父親はそれを許した

b) He didn’t want to go, but his father made him (go).

「彼は行きたくなかったが、父親はむりやり彼を行かせた

c) It’s allowed by the law.

「それは法律で許されている

d) We were permitted to use the room.

「私たちはその部屋を使うことを許可された

使役動詞「have」

動詞「have」が使役動詞として用いられる場合、当然してもらえることを「~してもらうようにもっていく」という意味を表します。

使役の意味合いが強く出ると「~させる」で、少し弱いと「(人に)~してもらう」の意味で用いられます。同じく目的語(O)の次に動詞の原形(原形不定詞)をとります。

have +目的語(O)+原形不定詞

I had my son clean up his room.

「私は息子の部屋を本人に掃除させた」

例文の要素

I / had / my son / clean up his room.

私は / 本人に / 息子の部屋を掃除 / させた

  • S+Vt+O+C:第5文型(SVOC)
  • 主語(S):I
  • 述語動詞(Vt):had【使役動詞】
  • 目的語(O):my son
  • 補語(C):clean up his room【原形不定詞句】

使役動詞にはいくつかありますが、それらの形は変わりません。

使役動詞を使った英文の形

使役動詞「make / let / have」+目的語(O)+原形不定詞(C)

ただし、get を除く

使役動詞「get」

動詞「get」が使役動詞として用いられる場合、「have」と同じように「(人に)~してもらう」という意味を表します。これまでの使役動詞と異なるのは、目的語(O)の次に to 不定詞をとることです。

get +目的語(O)+ to 不定詞

I got my teacher to correct my essay.

「私は先生に作文を添削してもらった」

例文の要素

I / got / my teacher / to correct my essay.

私は / 先生に / 作文を添削することを / してもらった

  • S+Vt+O+C:第5文型(SVOC)
  • 主語(S):I
  • 述語動詞(Vt):got【使役動詞】
  • 目的語(O):my teacher
  • 補語(C):to correct my essay【to 不定詞句】

4つの使役動詞の中で唯一 to 不定詞をとるので注意しましょう。

使役動詞「get」を使った英文の形

使役動詞「get」+目的語(O)+ to 不定詞(C)

使役動詞「have」と「get」の違い

(人に)~してもらう」という意味を表すには、「have」と「get」のどちらも使うことができます。原形不定詞と to 不定詞の違いはもちろんありますが、意味にも次のような違いがあり、使い分けが必要です。

使役動詞「have」と「get」の違い

「私は先生に作文を添削してもらった」

× I had my teacher correct my essay.

〇 I got my teacher to correct my essay.

  • have:「(当然の権利として)~してもらう」の意味なので、目上の人が目下の人に、あるいは客が店員などに「~してもらう」という場合に使う。
  • get:「手に入れる」という原義から分かるように、「(頼んだり説得したりして)~してもらう」の意味で使う。

上の例文のように「have」を使うと、「私は先生に(強制して)私の作文を直させた」の意味に近くなり、あまり印象の良くない文となってしまいます。

類語でも細かなニュアンスは異なります。日本語訳に出ないカッコ書きの意味も含めて覚えることが大切です。

知覚動詞

使役動詞と同じように、第5文型(SVOC)の補語(C)に原形不定詞をとるものに知覚動詞があります。知覚動詞は、「Oが~する〔~している〕のを見る〔聞く、感じる〕」などの意味を表す動詞です。

知覚動詞+目的語(O)+原形不定詞

I heard someone call my name.

「誰かが私の名前を呼ぶのが聞こえた」

例文の要素

I / heard / someone / call my name.

私は / 誰かが / 私の名前を呼ぶのを / 聞いた

  • S+Vt+O+C:第5文型(SVOC)
  • 主語(S):I
  • 述語動詞(Vt):heard【知覚動詞】
  • 目的語(O):someone
  • 補語(C):call my name【原形不定詞句】

主な知覚動詞には、次のようなものがあります。

主な知覚動詞
  • feel(感じる)
  • hear(聞く)
  • listen to(聞く)
  • look at(見る)
  • notice(気付く)
  • observe(見る、気付く)
  • overhear(漏れ聞く)
  • see(見る、見える)
  • watch((じっと)見る)

「perceive(気付く)」や「smell(においがする)」も知覚動詞に分類されますが、目的語(O)の次に原形不定詞ではなく、現在分詞だけをとるので、ここでは省略しています。

知覚動詞を使った例文です。

知覚動詞

  • I felt the house shake.(私は家が揺れるのを感じた)
  • I want to see the band perform live.(私はそのバンドが生演奏をするのを見たい)