図形の性質|2円の位置関係について

数学A

数学A 図形の性質

今回は、2円の位置関係について学習しましょう。

この単元に関する問題は、新課程以前ではよく出題されていました。それに対して新課程になると、あまり見かけなくなりました。あくまでも傾向なので、きちんと対応できる準備は必要です。

円だけを扱った問題であれば特に難しくありません。しかし、他の図形(三角形や四角形など)との融合問題になると、正答率が低く、差が付きやすくなります。

おそらく複数の図形が絡むので、より複雑になったことが原因かもしれません。できることなら、複数の図形を一緒に扱った入試レベルの問題をこなしておいた方が良いでしょう。

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2円の位置関係と共通接線

2つの円があるとき、それらの位置関係は5種類に分類されます。

2円の位置関係

  1. 円O’が円Oの外部にある。
  2. 2円O,O’が外接する。
  3. 2円O,O’が2点で交わる。
  4. 2円O,O’が内接する。
  5. 円O’が円Oの内部にある。

この5種類の位置関係に応じて、線分の長さを求めたり線分の長さの大小関係を考えたりする問題が出題されます。

また、2つの円を扱う問題では共通接線もよく扱われます。

共通接線とは、複数の図形に対して同時に接している直線のことです。1本の直線がそれぞれの図形と接点だけを共有しています。

複数の図形に対して、共通接線を何本引けるかなどの問題がよく出題されます。

2円の位置関係と共通接線
2円の位置関係、共通接線

2円の中心間距離と2円の半径との関係

2円の位置関係によって、2円の中心間距離2円の半径との関係が変わるので注意しましょう。作図しながら考えるとよく分かります。

円O’が円Oの外部にあるとき

2円O,O’の半径をそれぞれr,r’、2円の中心間距離をdとします。

円O’が円Oの外部にあるとき、図から分かるように、中心間距離dは、2円の半径の和(r+r’)よりも大きくなります。このときの関係を不等式で表すと以下のようになります。

円O’が円Oの外部にあるとき

円$O’$ が円 $O$ の外部にあるとき、$2$ 円の中心間距離と半径の関係は

\begin{align*} \quad d \gt r+r’ \end{align*}

ただし

\begin{align*} \quad d &\cdots \text{$2$ 円の中心間距離} \\[ 5pt ] r &\cdots \text{円 $O$ の半径} \\[ 5pt ] r’ &\cdots \text{円 $O’$ の半径} \end{align*}
円O'が円Oの外部にあるときの図
円O’が円Oの外部にある

2円O,O’が外接するとき

2円O,O’が外接するとき、図から分かるように、中心間距離dは、2円の半径の和(r+r’)に等しくなります。このときの関係を等式で表すと以下のようになります。

2円O,O’が外接するとき

$2$ 円$O \ , \ O’$ が外接するとき、$2$ 円の中心間距離と半径の関係は

\begin{align*} \quad d = r+r’ \end{align*}

ただし

\begin{align*} \quad d &\cdots \text{$2$ 円の中心間距離} \\[ 5pt ] r &\cdots \text{円 $O$ の半径} \\[ 5pt ] r’ &\cdots \text{円 $O’$ の半径} \end{align*}
2円O , O'が外接するときの図
2円O,O’が外接する

2円O,O’が2点で交わるとき

2円O,O’が2点で交わるとき、図から分かるように、中心間距離dは、2円の半径の和(r+r’)よりも小さくなり、2円の半径の差|r-r’|よりも大きくなります。

このときの関係を不等式で表すと以下のようになります。

2円O,O’が2点で交わるとき

$2$ 円$O \ , \ O’$ が $2$ 点で交わるとき、$2$ 円の中心間距離と半径の関係は

\begin{align*} \quad \left|r-r’ \right| \lt d \lt r+r’ \end{align*}

ただし

\begin{align*} \quad d &\cdots \text{$2$ 円の中心間距離} \\[ 5pt ] r &\cdots \text{円 $O$ の半径} \\[ 5pt ] r’ &\cdots \text{円 $O’$ の半径} \end{align*}
2円O , O'が2点で交わるときの図
2円O,O’が2点で交わる

一般に、差は絶対値をつけて表されます。図では、r<r’であるとして、差に絶対値をつけていません。以下の図でも同様です。

2円の中心間距離と半径の関係を表す不等式は、三角形の成立条件から導かれます。図のように、2円の中心と交点によって三角形において、三角形の成立条件を考えます。三角形の3辺の長さはd,r,r’です。

ちなみに、三角形の成立条件は以下のようになります。

三角形の成立条件

三角形が存在するとき、次の条件を満たす。

  • 2辺の長さの和は、他の1辺の長さより大きい。
  • 2辺の長さの差は、他の1辺の長さより小さい。

3辺の長さがd,r,r’である三角形において、この条件を考えます。

2円O,O’が内接するとき

2円O,O’が内接するとき、図から分かるように、中心間距離dは、2円の半径の差|r-r’|に等しくなります。このときの関係を不等式で表すと以下のようになります。

2円O,O’が内接するとき

$2$ 円$O \ , \ O’$ が内接するとき、$2$ 円の中心間距離と半径の関係は

\begin{align*} \quad d= \left| r-r’ \right| \end{align*}

ただし

\begin{align*} \quad d &\cdots \text{$2$ 円の中心間距離} \\[ 5pt ] r &\cdots \text{円 $O$ の半径} \\[ 5pt ] r’ &\cdots \text{円 $O’$ の半径} \end{align*}
2円O , O'が内接するときの図
2円O,O’が内接する

円O’が円Oの内部にあるとき

円O’が円Oの内部にあるとき、図から分かるように、中心間距離dは、2円の半径の差|r-r’|よりも小さくなります。この関係を不等式で表すことができます。

円O’が円Oの内部にあるとき

円 $O’$ が円 $O$ の内部にあるとき、$2$ 円の中心間距離と半径の関係は

\begin{align*} \quad d \lt \left| r-r’ \right| \end{align*}

ただし

\begin{align*} \quad d &\cdots \text{$2$ 円の中心間距離} \\[ 5pt ] r &\cdots \text{円 $O$ の半径} \\[ 5pt ] r’ &\cdots \text{円 $O’$ の半径} \end{align*}
円O'が円Oの内部にあるときの図
円O’が円Oの内部にある

円O’が円Oの内部にあるとき、不等式をよく間違えるので注意しましょう。

次は、2円に接する共通接線の本数を考えてみましょう。

2円の位置関係と共通接線の本数の関係

2つの円が共通接線をもつとき、共通接線はそれぞれの円と1点(接点)で交わります。どちらの円にも同時に接しているのが共通接線です。

この共通接線の本数は、2円の位置関係によって異なります。実際に作図して調べてみましょう。

円O’がOの外部にあるとき

円O’がOの外部にあるとき、図のように共通接線を引けます。このとき、4本の共通接線を引くことができます。

また、円O’が円Oの外部にあるので、2円は共有点をもちません

円O'が円Oの外部にあるときの共通接線
円O’がOの外部にある

ここで注意したいのは、円と共通接線の共有点(接点)は、それぞれの円上にあって、同じ点ではないことです。よく勘違いする人がいるので注意しましょう。

また、共通接線と円との共有点(接点)と、2つの円の共有点(交点)を混同しないようにしましょう。何と何の共有点なのかを把握しましょう。図示すれば間違うことはないので、必ず図を見て確認しましょう。

2円O,O’が外接するとき

2円O,O’が外接するとき、図のように共通接線を引けます。このとき、3本の共通接線を引くことができます。

また、2円O,O’が外接するので、2円は共有点を1個(接点)だけもちます

2円O , O'が外接するときの共通接線の図
2円O,O’が外接する

なお、3本の共通接線のうち1本は、2円の共有点を接点とする直線です。この場合、2円の共有点は、接点に一致します

2円O,O’が2点で交わる

2円O,O’が2点で交わるとき、図のように共通接線を引けます。このとき、2本の共通接線を引くことができます。

2円O,O’が2点で交わるので、2円は共有点を2個もちます。また、円と共通接線の共有点(接点)は、それぞれの円上にあります。

2円O , O'が2点で交わるときの共通接線の図
2円O,O’が2点で交わる

2円O,O’が内接するとき

2円O,O’が内接するとき、図のように共通接線を引けます。このとき、1本の共通接線を引くことができます。

2円O,O’が内接するので、2円は共有点を1個もちます。この共有点は、円と共通接線の共有点(接点)に一致します。

2円O , O'が内接するときの共通接線の図
2円O,O’が内接する

円O’が円Oの内部にある

円O’が円Oの内部にあるとき、2円の位置関係から共通接線を引くことができないので、共通接線は0本です。

また、円O’が円Oの内部にあるので、2円は共有点をもちません

円O'が円Oの内部にあるときの共通接線の図
円O’が円Oの内部にある

2円の位置関係と共通接線の本数をまとめると以下のようになります。

2円と共通接線の関係
2円の位置関係と共通接線の本数

次は、2つの円と共通接線を扱った図形において、接点間の距離を考えてみましょう。

接点間の距離

2円と共通接線を扱った図形では、共通接線の本数のほかに、接点間の距離(図では線分AB)を扱った問題が出題されます。

接点間の距離を扱った問題は、共通接線の引き方によって2パターンに分類されます。

図が与えられている場合が多いですが、自分で少し手を加える必要があります。作図の手順をきちんと覚えましょう。

接点が同じ側にあるときの接点間の距離

1つ目のパターンは、図1のように、共通接線との接点がともに同じ側(図では上側)にある図形です。

2円O,O’と共通接線ℓとの接点をそれぞれA,Bとします。

また、2円O,O’の半径をr,r’、中心間距離をdとします。

接点間の距離の図1
接点が同じ側にあるとき

このとき、接点間の距離である線分ABの長さを、r,r’,dを用いて表してみましょう。

中心O’を通り、接線ℓに平行な直線を引き、この直線と線分OAの交点をCとします。

このとき、OA⊥ℓ,OB⊥ℓであるので、OA⊥O’C,OB⊥O’Cです。これより、△OO’Cは直角三角形です。

接点間の距離の図1(平行線あり)
接点が同じ側にあるときの接点間距離

△OO’Cの一辺である辺O’Cは線分ABに等しいので、線分ABの長さを求めるには、辺O’Cの長さを求めれば良いことが分かります。

△OO’Cが直角三角形なので、三平方の定理を利用して辺O’Cの長さを求めます。

接点間距離

$\triangle OO’C$ において、三平方の定理より

\begin{align*} \quad {OO’}^2 = {OC}^2 + {O’C}^2 \end{align*}

ここで

\begin{align*} \quad OO’ &= d \\[ 7pt ] OC &= r-r’ \\[ 7pt ] O’C &= AB \end{align*}

より

\begin{align*} \quad d^2 = {\left(r-r’ \right)}^2 + {AB}^2 \end{align*}

よって

\begin{align*} \quad {AB}^2 = d^2 – {\left(r-r’ \right)}^2 \end{align*}

$AB \gt 0$ より

\begin{align*} \quad AB = \sqrt{ d^2 – {\left(r-r’ \right)}^2 } \end{align*}
接点間の距離の図1(平行線あり)
接点が同じ側にあるときの接点間距離

ABに平行な直線を引いて、ABをO’Cに平行移動。

接点が異なる側にあるときの接点間の距離

2つ目のパターンは、図2のように、共通接線との接点が異なる側(図ではAが上側、Bが下側)にある図形です。

2円O,O’と共通接線ℓとの接点をそれぞれA,Bとします。

また、2円O,O’の半径をr,r’、中心間距離をdとします。

接点間の距離の図2
接点が異なる側にあるとき

このとき、接点間の距離である線分ABの長さを、r,r’,dを用いて表してみましょう。

接点Bを通り、直線OO’に平行な直線を引き、この直線と直線OAの交点をCとします。

このとき、OA⊥ℓであるので、△ABCは直角三角形です。

平行線の引き方がパターン1とは異なるので注意しましょう。

接点間の距離の図2(平行線あり)
接点が異なる側にあるときの接点間距離

ちなみに、中心O’を通り、直線ℓに平行な直線を引いても直角三角形(△OO’C)をつくれます。こちらの方が1つ目のパターンと手順が同じで覚えやすいかもしれません。

接点間の距離は辺ABの長さに等しいですが、線分ABは△ABCの一辺です。直角三角形である△ABCにおいて、三平方の定理を利用して辺ABの長さを求めます。

接点間距離

$\triangle ABC$ において、三平方の定理より

\begin{align*} \quad {BC}^2 = {AB}^2 + {AC}^2 \end{align*}

ここで

\begin{align*} \quad BC &= d \\[ 7pt ] AC &= r+r’ \end{align*}

より

\begin{align*} \quad d^2 = {AB}^2 + \left(r+r’ \right)^2 \end{align*}

よって

\begin{align*} \quad {AB}^2 = d^2 – \left(r+r’ \right)^2 \end{align*}

$AB \gt 0$ より

\begin{align*} \quad AB = \sqrt{ d^{2} – \left(r+r’ \right)^{2} } \end{align*}
接点間の距離の図2(平行線あり)
接点が異なる側にあるときの接点間距離

OO’に平行な直線を引いて、OO’をBCに平行移動。

どちらのパターンであっても作図の仕方を知っておけば、式を覚える必要はありません。計算も三平方の定理を利用した計算なので、2辺の長さを求めてから計算すれば、それほど難しくありません。

接点間の距離のポイントをまとめると以下のようになります。

接点間の距離のまとめ
接点間の距離

次は、2円の位置関係を扱った問題を実際に解いてみましょう。