複素数と方程式|2次方程式の係数と2つの解の符号について

数学2

今回は、2次方程式の係数と2つの解の符号について学習しましょう。これまでの学習で、2次方程式の係数が、2つの解と関わりがあることが分かりました。ここでは、この関係を2つの解の符号と絡めて学習します。

2次方程式の実数解の符号

2次方程式が2つの実数解をもつとき、これらの符号からどのような条件が成り立つのかを考えてみましょう。

2つの実数解が取り得る符号の組み合わせは3通りあります。

2つの実数解が取り得る符号の組み合わせは3通り

  • 2つの実数解の符号がともに正
  • 2つの実数解の符号がともに負
  • 2つの実数解が異符号

それぞれの場合について、どのような条件が成り立つのかを考えます。

2つの実数解の符号がともに正のとき

2次方程式の解を考えるとき、2次関数のグラフを用いると視覚化されて理解しやすくなります。

2次方程式は、2次関数においてy=0のときの式です。この2次方程式を解くと、y=0のときのxの値が得られます。このときのxの値は、2次関数のグラフとx軸との共有点のx座標です。

つまり、2次方程式を解くということは、グラフとx軸との共有点のx座標を求めるということです。ですから、グラフがx軸と共有点をもてば、2次方程式は実数解をもつことになります。たとえば、グラフがx軸と2点で交わるならば、2次方程式は異なる2つの実数解をもちます。

2つの実数解の符号がともに正であるということは、2つの共有点のx座標がともに正であるということです。図示すると以下のようになります。

2つの実数解の符号がともに正のとき

2次関数のグラフは、図のようにx軸の正の部分と2点で交わります。このようにグラフがx軸と共有点をもつためには、以下のような条件が成り立つ必要があります。

2つの実数解の符号がともに正のとき1⃣

\begin{align*} &\text{$2$ 次方程式} \\[ 5pt ] &\quad ax^{\scriptsize{2}}+bx+c=0 \\[ 5pt ] &\text{の $2$ つの解を} \\[ 5pt ] &\quad \alpha \ , \ \beta \\[ 5pt ] &\text{とする。} \\[ 5pt ] &\text{また、判別式を} \\[ 5pt ] &\quad D=b^{\scriptsize{2}}-4ac \\[ 5pt ] &\text{とする。} \\[ 5pt ] &\text{$\alpha \gt 0$ かつ $\beta \gt 0$ となるには} \\[ 5pt ] &\quad f(x)=ax^{\scriptsize{2}}+bx+c \quad (a \gt 0) \\[ 5pt ] &\text{のグラフと $x$ 軸との共有点の関係から} \\[ 5pt ] &\quad \left\{ \begin{array}{l} D \geqq 0 \\[ 5pt ] \text{軸} \ -\frac{b}{2a} \gt 0 \qquad \cdots \text{①} \\[ 5pt ] f(0) \gt 0 \end{array} \right. \\[ 5pt ] &\text{が成り立てばよい。} \end{align*}

この条件は2次関数のグラフとx軸との位置関係から得られます。図と併せて考えると分かりやすいでしょう。

この単元では、解と係数との関わりを中心に学習しています。ですから、2つの実数解を用いて条件を書き出してみましょう。以下のようになります。

2つの実数解の符号がともに正のとき2⃣

\begin{align*} &\text{$2$ 次方程式} \\[ 5pt ] &\quad ax^{\scriptsize{2}}+bx+c=0 \\[ 5pt ] &\text{の $2$ つの解を} \\[ 5pt ] &\quad \alpha \ , \ \beta \\[ 5pt ] &\text{とする。} \\[ 5pt ] &\text{また、判別式を} \\[ 5pt ] &\quad D=b^{\scriptsize{2}}-4ac \\[ 5pt ] &\text{とする。} \\[ 5pt ] &\text{$\alpha \gt 0$ かつ $\beta \gt 0$ となるには、} \\[ 5pt ] &\quad \left\{ \begin{array}{l} D \geqq 0 \\[ 5pt ] \alpha+\beta \gt 0 \qquad \cdots \text{②} \\[ 5pt ] \alpha \beta \gt 0 \end{array} \right. \\[ 5pt ] &\text{が成り立てばよい。} \end{align*}

3つの条件が必要ですが、それぞれの条件で言えることをきちんと理解しておきましょう。

たとえば、判別式の条件だけでは、実数解の個数しか決定できません。2つの実数解の符号を決定するには、2つの実数解の和と積の条件が必要です。

2つの実数解の符号がともに正であるためには、2つの実数解の和と積がともに正でなければなりません。

2つの条件の違い

2次関数のグラフを用いたときと、2次方程式の2つの実数解で考えたときの条件を整理すると以下のようになります。

2つの条件の違いを比較する1⃣

\begin{align*} &\text{$2$ 次関数のグラフから得られる条件} \\[ 5pt ] &\quad \left\{ \begin{array}{l} D \geqq 0 \\[ 5pt ] \text{軸} \ -\frac{b}{2a} \gt 0 \qquad \cdots \text{①} \\[ 5pt ] f(0) \gt 0 \end{array} \right. \\[ 10pt ] &\text{$2$ 次方程式から得られる条件} \\[ 5pt ] &\quad \left\{ \begin{array}{l} D \geqq 0 \\[ 5pt ] \alpha+\beta \gt 0 \qquad \cdots \text{②} \\[ 5pt ] \alpha \beta \gt 0 \end{array} \right. \end{align*}

2つの条件①,②は、全く別物のように感じるかもしれませんが、そうでもありません。もう少し詳しく調べてみると、2つの条件が等価であることが分かります。

2つの条件の違いを比較する2⃣

\begin{align*} &\text{軸の条件から} \\[ 5pt ] &\quad -\frac{b}{2a} \gt 0 \quad \text{すなわち} \quad -\frac{b}{a} \gt 0 \\[ 7pt ] &\text{2つの実数解の和の条件から} \\[ 5pt ] &\quad \alpha+\beta \gt 0 \quad \text{すなわち} \quad -\frac{b}{a} \gt 0 \\[ 7pt ] &\text{となり、2つの条件は等価である。} \\[ 10pt ] &\text{グラフとy軸との関係から} \\[ 5pt ] &\quad f(0) \gt 0 \quad \text{すなわち} \quad c \gt 0 \\[ 7pt ] &\text{2つの実数解の積の条件から} \\[ 5pt ] &\quad \alpha \beta \gt 0 \quad \text{すなわち} \quad \frac{c}{a} \gt 0 \\[ 7pt ] &\text{$a \gt 0$ であるので} \\[ 5pt ] &\quad c \gt 0 \\[ 7pt ] &\text{となり、こちらの条件も等価である。} \end{align*}

条件②では、2つの実数解の和と積が出てくるので、解と係数の関係を利用します。

条件の見た目は違っていますが、最終的には同じ条件が得られるので実質的に等価です。ですから、2次方程式の2つの実数解の和と積を用いて、2つの実数解の符号が成り立つ条件を考えても構わないのです。

そうは言っても、グラフを用いて視覚化すると、条件を明確にイメージできる利点があります。基本的には図示しながら考えましょう。

2つの実数解の符号がともに正となるための条件

\begin{align*} &\quad \text{$\alpha \gt 0$ かつ $\beta \gt 0$} \quad \Longleftrightarrow \quad D \geqq 0 \ , \ \alpha+\beta \gt 0 \ , \ \alpha \beta \gt 0 \\[ 7pt ] &\text{ただし、$2$ 次方程式 $ax^{\scriptsize{2}}+bx+c=0$ の $2$ つの解を $\alpha \ , \ \beta$} \\[ 5pt ] &\text{判別式を $D=b^{\scriptsize{2}}-4ac$ とする。} \end{align*}

グラフの様子もセットで覚えておきましょう。

実数解の符号が正であるときのグラフと条件

2つの実数解の符号がともに負のとき

残りの符号の組合せの場合も同じ要領です。2次関数のグラフを図示すると、以下のようになります。

2つの実数解の符号がともに負のとき

2次関数のグラフを用いたときと、2次方程式の2つの実数解で考えたときの条件を整理すると以下のようになります。

2つの実数解がともに負のとき

\begin{align*} &\text{$\alpha \lt 0$ かつ $\beta \lt 0$ となるための条件は以下の通り。} \\[ 5pt ] &\text{$2$ 次関数のグラフから得られる条件} \\[ 5pt ] &\quad \left\{ \begin{array}{l} D \geqq 0 \\[ 5pt ] \text{軸} \ -\frac{b}{2a} \lt 0 \qquad \cdots \text{③} \\[ 5pt ] f(0) \gt 0 \end{array} \right. \\[ 10pt ] &\text{$2$ 次方程式から得られる条件} \\[ 5pt ] &\quad \left\{ \begin{array}{l} D \geqq 0 \\[ 5pt ] \alpha+\beta \lt 0 \qquad \cdots \text{④} \\[ 5pt ] \alpha \beta \gt 0 \end{array} \right. \end{align*}

2つの実数解の符号がともに負であるためには、2つの実数解の和が負、かつ積が正でなければなりません。2つの条件③,④は、見た目は異なっていてもやはり等価です。

2つの実数解がともに負となるための条件

\begin{align*} &\quad \text{$\alpha \lt 0$ かつ $\beta \lt 0$} \quad \Longleftrightarrow \quad D \geqq 0 \ , \ \alpha+\beta \lt 0 \ , \ \alpha \beta \gt 0 \\[ 7pt ] &\text{ただし、$2$ 次方程式 $ax^{\scriptsize{2}}+bx+c=0$ の $2$ つの解を $\alpha \ , \ \beta$} \\[ 5pt ] &\text{判別式を $D=b^{\scriptsize{2}}-4ac$ とする。} \end{align*}

グラフもセットで覚えましょう。

実数解の符号が負であるときのグラフと条件

2つの実数解の符号が異符号の場合

2つの実数解の符号が異符号の場合はこれまでよりも条件が少なくなりますが、同じ要領です。2次関数のグラフを図示すると、以下のようになります。

2つの実数解の符号が異符号のとき

2次関数のグラフを用いたときと、2次方程式の2つの実数解で考えたときの条件を整理すると以下のようになります。

2つの実数解が異符号のとき

\begin{align*} &\text{$\alpha$ と $\beta$ の符号が異符号となるための条件は以下の通り。} \\[ 5pt ] &\text{$2$ 次関数のグラフから得られる条件} \\[ 5pt ] &\quad f(0) \lt 0 \quad \cdots \text{⑤} \\[ 10pt ] &\text{$2$ 次方程式から得られる条件} \\[ 5pt ] &\quad \alpha \beta \lt 0 \quad \cdots \text{⑥} \end{align*}

2つの実数解の符号が異符号であるためには、2つの実数解の積が負でなければなりません。和については、正負どちらとも言えないので一意に決まりません。

また、判別式の条件がないのは、2つの条件⑤,⑥が成り立てば、2次方程式が2つの実数解をもつ条件(D>0)を満たすからです。このことはグラフを見れば明らかです。

もちろん、2つの条件⑤,⑥はやはり等価な条件となります。

2つの実数解が異符号となるための条件

\begin{align*} &\quad \text{$\alpha$ と $\beta$ の符号が異符号} \quad \Longleftrightarrow \quad \alpha \beta \lt 0 \\[ 7pt ] &\text{ただし、$2$ 次方程式 $ax^{\scriptsize{2}}+bx+c=0$ の $2$ つの解を $\alpha \ , \ \beta$ とする。} \end{align*}

グラフもセットで覚えましょう。

実数解の符号が異符号であるときのグラフと条件

2つの実数解の符号の組み合わせとその条件のまとめ

3通りの組み合わせについて、まとめると以下のようになります。

2つの実数解の符号の組み合わせとその条件

\begin{align*} &\text{$2$ 次方程式 $ax^{\scriptsize{2}}+bx+c=0$ の $2$ つの解を $\alpha \ , \ \beta$ とする。} \\[ 5pt ] &\text{また、判別式を $D=b^{\scriptsize{2}}-4ac$ とする。} \\[ 5pt ] &\text{[1] $\quad \alpha \gt 0$ かつ $\beta \gt 0$} \quad \Longleftrightarrow \quad D \geqq 0 \ , \ \alpha+\beta \gt 0 \ , \ \alpha \beta \gt 0 \\[ 7pt ] &\text{[2] $\quad \alpha \lt 0$ かつ $\beta \lt 0$} \quad \Longleftrightarrow \quad D \geqq 0 \ , \ \alpha+\beta \lt 0 \ , \ \alpha \beta \gt 0 \\[ 7pt ] &\text{[3] $\quad \alpha$ と $\beta$ の符号が異符号} \quad \Longleftrightarrow \quad \alpha \beta \lt 0 \\[ 7pt ] &\text{([3]のとき、$D \gt 0$ が成り立つので、判別式の条件は不要。)} \end{align*}

2次方程式の2つの実数解の符号についての問題では、判別式2つの実数解の和と積から条件を導きます。

2つの実数解の和と積は、言い換えると解と係数の関係です。解と係数の関係を利用するので、係数や定数項についての式を導くことができます。

次は、2次方程式の係数と2つの解の符号を扱った問題を実際に解いてみましょう。