整数の性質|約数と倍数について

数学A

数学A 整数の性質

今回から「整数の性質」の単元になります。まず学習するのは、約数と倍数についてです。

小中学校で学習した内容の続きになるので、忘れていないか確認しながら取り組みましょう。

約数と倍数、倍数の判定法、素数、素因数分解

この単元では、以下のような事柄を学習します。

この単元で学習する事柄

  • 約数と倍数
  • 倍数の判定法
  • 素数
  • 素因数分解

いずれもすでに学習している事柄ですが、これまでよりも応用的な内容となります。

約数と倍数

2つの整数a,bについて、aがbで割り切れるとき、bはaの約数aはbの倍数と言います。

たとえば、2つの整数が12,4であれば、12が4で割り切れます。ですから、4は12の約数、12は4の倍数です。

一般化することは便利な反面、抽象的になるので説明をすぐに理解するのが難しくなるときがあります。そんなときは、具体化すると理解しやすくなります。

倍数の判定法

計算するときに意外と役に立つのが、倍数の判定法です。

割り切れるかどうかが分かるということは、倍数や約数の関係を見抜けるということです。このような知識を持っていると、分数を扱う機会が増える高校数学では重宝します。

一般に、以下のようにして倍数を判定します。

倍数の判定法

下○桁の数で判定する倍数

  • 2の倍数 … 下1桁の数が偶数(0=0×2より、0は2の倍数に含める)
  • 5の倍数 … 下1桁の数が0または5
  • 4の倍数 … 下2桁が4の倍数
  • 8の倍数 … 下3桁が8の倍数

各位の和で判定する倍数

  • 3の倍数 … 各位の和が3の倍数
  • 9の倍数 … 各位の和が9の倍数

2つの条件で判定する倍数

  • 6の倍数 … 2の倍数かつ3の倍数

倍数の判定法を利用して、与えられた自然数が何の倍数かを調べてみましょう。

$4$ 桁の自然数 $7128$ が何の倍数かを調べよ。

7128について、下○桁の数を調べると、以下のことが分かります。

7128について下○桁の数で分かること

  • 下1桁の数8 … 偶数
  • 下2桁の数28 … 4の倍数
  • 下3桁の数128 … 8の倍数

このことから、下○桁の数で判定すると、7128は2,4,8の倍数であることが分かります。

次に、各位の和を調べると、以下のことが分かります。

7128について各位の和で分かること

各位の和 7+1+2+8=18 … 3,9の倍数

このことから、各位の和で判定すると、7128は3,9の倍数であることが分かります。

また、7128は2の倍数、かつ3の倍数でもあるので、6の倍数です。

以上のことから、7128は2,3,4,6,8,9の倍数であり、2,3,4,6,8,9は、7128の約数であることが分かります。

倍数の判定ができるということは、その数がどんな約数(因数)をもつのかも判定できるということです。計算のあらゆる場面で役立つので、瞬時に判定できるようにしておきましょう。

おまけの判定法

他にも7,11,13などの倍数を判定する方法があります。全く知らない人もいるかもしれませんが、上記の判定法に比べて、やや手間が掛かるのであまり使われていないようです。

簡単に紹介しておきますが、上記の判定法をマスターしておけば十分に対応できます。余力があれば覚えておくと良いでしょう。

7,11,13の倍数の判定法

  • 7の倍数:末位から左へ3桁ごとに区切り、最後の区画から奇数番目の区画の和から、偶数番目の区画の和を引いた差が7の倍数
  • 11の倍数:末位から左へ向かって奇数番目の数の和から、偶数番目の数の和を引いた差が11の倍数(各位の数を左から交互に足し引きしても良い)
  • 13の倍数:7の倍数の判定法と同じ

具体例として、31122が7,11,13の倍数であるかを調べてみましょう。

31122が7,11,13の倍数であるか

\begin{align*} &\text{$31122$ を末位から左へ $3$ 桁ごとに区切ると} \\[ 5pt ] &\quad 31 \ | \ 122 \\[ 7pt ] &\text{左側の区画を最後の区画とすると} \\[ 5pt ] &\text{最後の区画から奇数番目の区画は $31$} \\[ 7pt ] &\text{最後の区画から偶数番目の区画は $122$} \\[ 7pt ] &\text{2つの区画の差は} \\[ 5pt ] &\quad 122-31=91=13 \times 7 \\[ 7pt ] &\text{であるので、$31122$ は $7 \ , \ 13$ の倍数である。} \\[ 5pt ] &\text{また} \\[ 5pt ] &\quad (2+1+3)-(2+1)=3 \\[ 7pt ] &\text{であるので、$31122$ は $11$ の倍数ではない。} \end{align*}

ちなみに、7128は、7,13の倍数ではありませんが、11の倍数です。

7128は11の倍数

\begin{align*} &\text{$7128$ の末位から左へ向かって奇数番目の和は} \\[ 5pt ] &\quad 8+1=9 \\[ 7pt ] &\text{$7128$ の末位から左へ向かって偶数番目の和は} \\[ 5pt ] &\quad 2+7=9 \\[ 7pt ] &\text{これらの差は} \\[ 5pt ] &\quad 9-9=0=0 \times 11 \\[ 7pt ] &\text{よって、$7128$ は $11$ の倍数である。} \end{align*}

実は、7の倍数の判定法は、これだけでなく他にもあります。ここで紹介したものは、13の倍数の判定法と兼用できるので、覚えるのであればこの判定法が良いでしょう。

素数

素数とは、2以上の整数で、1とそれ自身以外の正の約数をもたないのことです。少し大雑把な言い方をすると、正の約数を2個しかもたない数のことです。

1は素数ではない。1の正の約数は1のみ。

100以下の素数は25個存在します。これらを小さい順に並べると以下のようになります。

100以下の素数

\begin{align*} &\quad 2 \ , \ 3 \ , \ 5 \ , \ 7 \\[ 5pt ] &\quad 11 \ , \ 13 \ , \ 17 \ , \ 19 \\[ 5pt ] &\quad 23 \ , \ 29 \\[ 5pt ] &\quad 31 \ , \ 37 \\[ 5pt ] &\quad 41 \ , \ 43 \ , \ 47 \\[ 5pt ] &\quad 53 \ , \ 59 \\[ 5pt ] &\quad 61 \ , \ 67 \\[ 5pt ] &\quad 71 \ , \ 73 \ , \ 79 \\[ 5pt ] &\quad 83 \ , \ 89 \\[ 5pt ] &\quad 97 \end{align*}

100を超える素数については、オンライン整数列大辞典(On-Line Encyclopedia of Integer Sequences)というサイトにて無料で閲覧できます。

素数以外の整数列も検索できます。また、数列の名前に始まり、由来、参考文献、公式、キーワードなどの情報を一覧できるので興味のある人は覗いてみると良いでしょう。

素因数分解

素因数分解とは、自然数をいくつかの素数の積の形で表すことです。

自然数を素因数分解すると、いくつかの素数の積で表されます。このとき、素数は自然数の因数であるので素因数と言います。

たとえば、12の約数は1,2,3,4,6,12です。この約数のうち、素数は2,3なので、これらを用いて分解します。素数2,3のことを12の素因数と言います。

12の素因数分解

\begin{align*} \quad 12 &= 4 \times 3 \\[ 7pt ] &= 2^{\scriptsize{2}} \times 3 \end{align*}

素因数分解するときは、大雑把に因数で分解し、さらに素因数で分解していくとやりやすいです。

約数が因数となる。また、因数のうち素数のものを素因数と言う。

知っておきたい平方数や自然数の累乗の値

約数を見つけるときや素因数分解をするとき、平方数自然数の累乗の値を覚えておくと便利です。このような数を毎回筆算するようだと、解くスピードが遅くなってしまうので、できる限り覚えておきましょう。

平方数の場合、16ぐらいまでは暗算できると良いでしょう。

平方数

\begin{array}{c|c|c|c|c|c|c|c|c|c} n & 11 & 12 & 13 & 14 & 15 & 16 & 17 & 18 & 19 \\[ 5pt ] \hline n^{\scriptsize{2}} & 121 & 144 & 169 & 196 & 225 & 256 & 289 & 324 & 361 \end{array}

2の累乗は全般的によく出てきます。210までは覚えたいところです。覚える自信のない人でも、25と210だけでも確実に覚えましょう。

2の累乗

\begin{array}{c|c|c|c|c|c|c|c|c|c} n & 1 & 2 & 3 & 4 & {\mathbf{5}} & 6 & 7 & 8 & 9 & {\mathbf{10}} \\[ 5pt ] \hline 2^{n} & 2 & 4 & 8 & 16 & {\mathbf{32}} & 64 & 128 & 256 & 512 & {\mathbf{1024}} \end{array}

絶対に覚えておきたい2の累乗

\begin{align*} \quad 2^{\scriptsize{5}} &= 32 \\[ 7pt ] \quad 2^{\scriptsize{10}} &= 1024 \end{align*}

3の累乗もよく出てきます。33や34は頻繁に出てきます。35くらいまではサッと使えるようにしておきましょう。

3の累乗

\begin{array}{c|c|c|c|c|c|c|c|c|c} n & 1 & 2 & {\mathbf{3}} & {\mathbf{4}} & {\mathbf{5}} & 6 & 7 \\[ 5pt ] \hline 3^{n} & 3 & 9 & {\mathbf{27}} & {\mathbf{81}} & {\mathbf{243}} & 729 & 2187 \end{array}

5の累乗や6の累乗も覚えておくと便利です。たとえば、63が出てくるのは、サイコロを3回、または3個振ったときの場合の数です。

5の累乗

\begin{array}{c|c|c|c|c|c|c|c|c|c} n & 1 & 2 & {\mathbf{3}} & 4 & 5 \\[ 5pt ] \hline 5^{n} & 5 & 25 & {\mathbf{125}} & 625 & 3125 \end{array}

6の累乗

\begin{array}{c|c|c|c|c|c|c|c|c|c} n & 1 & 2 & {\mathbf{3}} & 4 & 5 \\[ 5pt ] \hline 6^{n} & 6 & 36 & {\mathbf{216}} & 1296 & 7776 \end{array}

平方数や自然数の累乗の値は、場合の数や確率で扱うことが多い。覚えておくと計算のスピードが上がる。

次は、約数や倍数を扱った問題を実際に解いてみましょう。