図形と方程式|平行または垂直な直線の方程式について
一般形を上手に利用しよう
例題(1)の別解例
例題では、傾きと切片の分かる基本的な式に変形しました。基本に忠実ではありますが、毎回、変形するのが面倒です。
そこで、一般形を上手に利用することを考えてみましょう。
2直線が平行であるとき、傾きが一致します。
傾きが一致するということは、一般形で表された2直線の方程式において、xの項の係数がともに等しく、かつyの項の係数がともに等しくなるということです。そうでなければ、2直線の傾きは一致しません。
傾きが一致⇔係数が一致
$2$ 直線の方程式を
\begin{align*} &\quad a_{1}x+b_{1}y+c_{1}=0 \\[ 7pt ] &\quad a_{2}x+b_{2}y+c_{2}=0 \end{align*}とする。
$2$ 直線が平行であるとき、傾きが一致するので
\begin{align*} \quad -\frac{a_{1}}{b_{1}}=-\frac{a_{2}}{b_{2}} \quad \text{ただし、$b_{1} \neq 0 \ , \ b_{2} \neq 0$} \end{align*}ここで
\begin{align*} \quad a_{1}=a_{2} \quad \text{かつ} \quad b_{1}=b_{2} \end{align*}が成り立てば、傾きは一致する。
このことを踏まえると、以下のようにして例題(1)を解くことができます。
例題(1)の別解例
点 $(2 \ , \ -4)$ を通り、直線 $2x+y-3=0$ に平行なので
\begin{align*} \quad 2 \left(x-2 \right)+1 \cdot \left\{y-\left(-4 \right) \right\}=0 \end{align*}これを整理すると
\begin{align*} \quad 2x+y=0 \end{align*}別解例で分かるように、傾きを求めずに一般形のままで求めることができます。
整理する前の式を変形すれば、例題(1)の解答例2⃣と同じ式を導けます。
移行すると解答例と同じ式に
\begin{align*} \quad 2 \left(x-2 \right)+1 \cdot \left\{y-\left(-4 \right) \right\}=0 \end{align*}より
\begin{align*} \quad 1 \cdot \left\{y-\left(-4 \right) \right\}=-2 \left(x-2 \right) \end{align*}これは例題(1)の解答例2⃣の式
\begin{align*} \quad y-\left(-4 \right)=-2 \left(x-2 \right) \end{align*}と同じ式になる。
平行な直線の方程式を一般形で表すと、以下のようになります。ただし、1点の座標が必要です。
平行な直線の方程式
点 $(x_{1} \ , \ y_{1})$ を通り、直線 $ax+by+c=0$ に平行な直線の方程式は
\begin{align*} \quad a \left(x-x_{1} \right)+b\left(y-y_{1} \right)=0 \end{align*}これは $a=0$ または $b=0$ の場合も成り立つ。
この方程式の利点は、軸に垂直な直線の方程式まで表せるところです。傾きと切片を用いた方程式だと、どうしてもx軸に垂直な直線が除外されるので、別途に考えなければなりません。
一般形であれば、軸に垂直かどうかの吟味が不要になるので、かなり扱いやすい式です。
例題(2)の別解例
2直線が垂直であるとき、傾きの積が-1となります。絶対値で考えれば、一方の傾きは、他方の傾きの逆数であることに気付きます。
逆数になっているということは、一般形で考えれば、xの項の係数とyの項の係数とが入れ替わっているということです。そうでなければ、傾きの積の絶対値が1になりません。
傾きの積の絶対値は1⇔傾きは逆数の関係
$2$ 直線の方程式を
\begin{align*} &\quad a_{1}x+b_{1}y+c_{1}=0 \\[ 7pt ] &\quad a_{2}x+b_{2}y+c_{2}=0 \end{align*}とする。
$2$ 直線が垂直であるとき、傾きの積が $-1$ となるので
\begin{align*} \quad \left(-\frac{a_{1}}{b_{1}} \right) \left(-\frac{a_{2}}{b_{2}} \right)=-1 \quad \text{ただし、$b_{1} \neq 0 \ , \ b_{2} \neq 0$} \end{align*}よって
\begin{align*} \quad \frac{a_{2}}{b_{2}}=-\frac{b_{1}}{a_{1}} \end{align*}ここで
\begin{align*} \quad a_{2}=b_{1} \quad \text{かつ} \quad b_{2}=-a_{1} \end{align*}が成り立てば、傾きの積が $-1$ となる。
このことを踏まえると、以下のようにして例題(2)を解くことができます。
例題(2)の別解例
点 $(-2 \ , \ 3)$ を通り、直線 $x-3y-1=0$ に垂直なので
\begin{align*} \quad -3 \left\{x-\left(-2 \right) \right\}-1 \cdot \left(y-3 \right)=0 \end{align*}これを整理すると
\begin{align*} \quad -3x-y-3=0 \end{align*}よって
\begin{align*} \quad 3x+y+3=0 \end{align*}傾きを求めずに一般形のままで求めることができます。
整理する前の式を変形すれば、例題(2)の解答例3⃣と同じ式を導けます。
移行すると解答例と同じ式に
\begin{align*} \quad -3 \left\{x-\left( -2 \right) \right\}-1 \cdot \left(y-3 \right)=0 \end{align*}より
\begin{align*} \quad -1 \cdot \left(y-3 \right)=3 \left\{x-\left(-2 \right) \right\} \end{align*}これは例題(2)の解答例3⃣の式
\begin{align*} \quad y-3=-3 \left\{x-\left(-2 \right) \right\} \end{align*}と同じ式になる。
垂直な直線の方程式を一般形で表すと、以下のようになります。ただし、1点の座標が必要です。
垂直な直線の方程式
点 $(x_{1} \ , \ y_{1})$ を通り、直線 $ax+by+c=0$ に垂直な直線の方程式は
\begin{align*} \quad b \left(x-x_{1} \right)-a \left(y-y_{1} \right)=0 \end{align*}これは $a=0$ または $b=0$ の場合も成り立つ。
次は、平行または垂直な直線の方程式を扱った問題を実際に解いてみましょう。
平行または垂直な直線の方程式を扱った問題を解いてみよう
次の問題を解いてみましょう。
問
直線ℓの方程式を $2x+3y=4$ とする。
この直線ℓに平行で点 $(1 \ , \ 2)$ を通る直線の方程式を求めよ。
また、直線ℓに垂直で点 $(2 \ , \ 3)$ を通る直線の方程式を求めよ。
問の解答・解説
直線ℓの方程式が一般形に近い形で与えられています。傾きを求めずに、一般形のまま求めてしまいましょう。なお、直線ℓの定数項は関係しないので、一般形に変形しなくても構いません。
まず、直線ℓに平行な直線の方程式を求めます。
問の解答例 1⃣
\begin{align*} \quad \text{ℓ} : \ 2x+3y=4 \end{align*}直線ℓに平行な直線は、点 $(1 \ , \ 2)$ を通るので
\begin{align*} \quad 2 \left(x-1 \right)+3 \left(y-2 \right)=0 \end{align*}整理すると
\begin{align*} \quad 2x+3y-8=0 \end{align*}一般形のままで解ければ、秒殺できます。あまり時間を掛けたくない入試ではとても便利です。
次に、直線ℓに垂直な直線の方程式を求めます。
問の解答例 2⃣
\begin{align*} &\quad \text{ℓ} : \ 2x+3y=4 \\[ 7pt ] &\quad \vdots \end{align*}直線ℓに垂直な直線は、点 $(2 \ , \ 3)$ を通るので
\begin{align*} \quad 3 \cdot \left(x-2 \right)-2 \left(y-3 \right)=0 \end{align*}整理すると
\begin{align*} \quad 3x-2y=0 \end{align*}一般形のまま扱えれば、平行な直線や垂直な直線を素早く求めることができます。ほとんど労力がいらないのでお勧めの解法です。
平行または垂直な直線の方程式
点 $(x_{1} \ , \ y_{1})$ を通り、直線 $ax+by+c=0$ に平行な直線の方程式は
\begin{align*} \quad a \left(x-x_{1} \right)+b\left(y-y_{1} \right)=0 \end{align*}また、垂直な直線の方程式は
\begin{align*} \quad b \left(x-x_{1} \right)-a \left(y-y_{1} \right)=0 \end{align*}これらは $a=0$ または $b=0$ の場合も成り立つ。
一般形はすべての直線を表せるので、軸に垂直かどうかの吟味を必要としません。もちろん、与式を変形して傾きを求める必要もなくなります。かなり時間を短縮できるので、使えるようにしておきましょう。
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さいごのセンター試験では、共通テストを意識した問題が出題されていました。これまでに見慣れない形式での出題がいくつか見られました。
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なお、新入試に対応するための改訂版が2020年2月に出版されています。改訂版を希望する場合、「新入試対応」とあるものを購入しましょう。
大事なことは、自分に合った教材を徹底的に活用することです。どの教材を選ぶにしても、自分の目で中身を確認し、納得してから購入することが大切です。
さいごにもう一度まとめ
- 平行または垂直な直線の方程式は、傾きと1点の座標で求めよう。
- 一般形のままで、平行または垂直な直線の方程式を求めよう。
- 係数の関係に気付けば、平行または垂直な直線の方程式の係数は簡単に分かる。
- 一般形は、すべての直線を表せるので、利用できるようになっておこう。