図形と方程式|定点を通る直線の方程式について
定点を通る直線の方程式を扱った問題を解いてみよう
次の問題を解いてみましょう。
問
次の直線
\begin{align*} \quad \left(5k+3 \right)x-\left(3k+5 \right)y-10k+10=0 \quad \cdots \text{①} \end{align*}は、実数 $k$ の値にかかわらず、定点 $A$ を通ることを示し、この点 $A$ の座標を求めよ。
問の解答・解説
「実数kの値にかかわらず、定点を通る」という言い回しがあります。手順通りに解きましょう。
与えられた直線の方程式を実数kについて整理します。
問の解答例 1⃣
\begin{align*} \quad \left(5k+3 \right)x-\left(3k+5 \right)y-10k+10=0 \quad \cdots \text{①} \end{align*}直線の方程式①を $k$ について整理すると
\begin{align*} \quad \left(5x-3y-10 \right) k+\left( 3x-5y+10 \right)=0 \quad \cdots \text{②} \end{align*}②式は実数kの値にかかわらず成り立つので、②式を実数kの恒等式と考えることができます。この考えをもとにして、恒等式が成り立つための条件を導きます。
問の解答例 2⃣
\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \left(5x-3y-10 \right) k+\left( 3x-5y+10 \right)=0 \quad \cdots \text{②} \end{align*}②が実数 $k$ の恒等式となるための条件は
\begin{align*} \quad 5x-3y-10=0 \ , \ 3x-5y+10=0 \end{align*}②式から変数x,yについての1次方程式を2つ導くことができました。これらを連立して解きます。
問の解答例 3⃣
\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad 5x-3y-10=0 \ , \ 3x-5y+10=0 \end{align*}これを連立して解くと
\begin{align*} \quad x=5 \ , \ y=5 \end{align*}連立方程式の解が、定点Aの座標です。実数kの値によらず②式が成り立つことを断っておきます。
問の解答例 4⃣
\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad x=5 \ , \ y=5 \end{align*}このとき、②は $k$ の値にかかわらず成り立つ。
よって、直線②、すなわち直線①は $k$ の値にかかわらず、定点
\begin{align*} \quad A \ (5 \ , \ 5) \end{align*}を通る。
計算ミスに注意するくらいで、特に難しい箇所はありません。
問の別解例
例題で紹介した別解で解いてみましょう。例題よりも簡単に解けそうです。
実数kに適当な値を代入して、直線の方程式を2つ求めます。
問の別解例
\begin{align*} \quad \left(5k+3 \right)x-\left(3k+5 \right)y-10k+10=0 \quad \cdots \text{①} \end{align*}$k=-\frac{3}{5}$ のとき、①は
\begin{align*} \quad \left\{5 \cdot \left(-\frac{3}{5} \right)+3 \right\}x-\left\{3 \cdot \left(-\frac{3}{5} \right)+5 \right\}y-10 \cdot \left(-\frac{3}{5} \right)+10=0 \end{align*}整理すると
\begin{align*} \quad -16y+80=0 \end{align*}よって
\begin{align*} \quad y=5 \quad \cdots \text{②} \end{align*}$k=-\frac{5}{3}$ のとき、①は
\begin{align*} \quad \left\{5 \cdot \left(-\frac{5}{3} \right)+3 \right\}x-\left\{3 \cdot \left(-\frac{5}{3} \right)+5 \right\}y-10 \cdot \left(-\frac{5}{3} \right)+10=0 \end{align*}整理すると
\begin{align*} \quad -16x+80=0 \end{align*}よって
\begin{align*} \quad x=5 \quad \cdots \text{③} \end{align*}$2$ 直線②,③の交点の座標は
\begin{align*} \quad (5 \ , \ 5) \end{align*}逆に、このとき
\begin{align*} \text{(①の左辺)} \ = \left(5k+3 \right) \cdot 5-\left(3k+5 \right) \cdot 5-10k+10=0 \end{align*}よって、①は $k$ の値にかかわらず成り立つ。
したがって、①は $k$ の値にかかわらず、定点
\begin{align*} \quad A \ (5 \ , \ 5) \end{align*}を通る。
x,yの係数を0にするような値であれば、軸に垂直な直線の方程式となるので、連立方程式を解く必要がなくなります。かなり簡単に解けます。
別解の解法を利用するのであれば、x,yの係数を0にするような値を代入しましょう。
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さいごにもう一度まとめ
- 「実数kにかかわず」とあれば、kについての恒等式を考えよう。
- 実数kにかかわらず直線が通る定点は、2直線の交点のことである。
- 実数kにかかわらず定点を通るのであれば、具体的な2直線から求めても良い。
- 実数kに適当な値を代入するときは、x,yの係数が0となる値にしよう。
- 実数kにかかわらず成り立つことを必ず確認しよう。