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式と証明|恒等式の係数決定(数値代入法)について

数学2 式と証明アイキャッチ03 数学II

今回も恒等式の係数決定について学習しましょう。恒等式の係数を決定する方法は、未定係数法と言われ、2通りの方法があります。未定係数法の係数比較法を前回の記事で紹介しましたが、今回は数値代入法です。

数値代入法による恒等式の係数決定でも、係数を求めることは難しくありません。ただし、係数比較法と異なり、係数を求めた後に必ずやらなければならないことがあります。答えが分かったから良いではなく、なぜ必要なのかを理解しましょう。

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未定係数法

恒等式の未知の係数のことを未定係数と言いました。そして、この未定係数を求めるには、恒等式の性質を利用します。恒等式の性質は以下の通りです。

恒等式の性質その1
$P \ , \ Q$ が $x$ についての整式であるとき、
① $P=0$ が恒等式 ⇔ $P$ の各項の係数はすべて $0$ である。
② $P=Q$ が恒等式 ⇔ $P$ と $Q$ の次数は等しく、両辺の同じ次数の項の係数はそれぞれ等しい。

恒等式の性質その2
$P \ , \ Q$ が $x$ についての $n$ 次以下の整式であるとき、等式 $P=Q$ が $(n+1)$ 個の異なる $x$ の値に対して成り立つならば、等式 $P=Q$ は $x$ についての恒等式である。

これらの性質を利用して、未定係数を求めますが、その方法は2通りあります。

未定係数法は2通り
【1】 係数比較法
【2】 数値代入法

係数比較法は、恒等式の性質その1を利用した方法で、前回の記事で紹介済みです。数値代入法は、恒等式の性質その2を利用した方法です。この方法では、両辺に適当な数字をいくつか代入して、連立方程式などを解きます

ここでは数値代入法を取り上げます。

数値代入法

係数比較法では、係数を求めるための連立方程式を解く必要があります。この連立方程式の計算が少し複雑で面倒なときがあります。そのようなときに、数値代入法であれば簡単に係数を求めることができます。

数値代入法では、直接、文字に数値を代入して、係数の関係式を導出します。与式に合わせて数値を代入するので、係数比較法のときよりも簡単な形の式ができます。ここが数値代入法のメリットです。

数値代入法を利用して解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

例題
\begin{align*}
&\text{次の等式が $x$ についての恒等式となるように、} \\[ 5pt ]
&\text{定数 $a \ , \ b \ , \ c$ の値を定めよ。} \\[ 5pt ]
&\quad a(x-1)(x-2)+b(x-2)(x-3)+c(x-3)(x-1) = 6
\end{align*}

例題の解答・解説

等式を見ると、右辺は定数(0次式)ですが、左辺は定数 a,b,c が0でない値だとすれば、2次式です。このように同じ次数の項が存在しない場合、係数比較法だと面倒な計算になります。

係数比較法で解く場合

数値代入法との比較のために、すでに学習した係数比較法で解いてみます。左辺を展開して整理します。

左辺を展開して整理する
\begin{align*}
&\text{等式の左辺を $x$ について整理すると、} \\[ 5pt ]
&\quad \text{(左辺)} \ = (a+b+c)x^{\scriptsize{2}} +(-3a-5b-4c)x +2a+6b+3c \\[ 5pt ]
&\text{であるので、} \\[ 5pt ]
&\quad (a+b+c)x^{\scriptsize{2}} +(-3a-5b-4c)x +2a+6b+3c = 6
\end{align*}

両辺にある同じ次数の項について、係数を比較します。

係数を比較する
\begin{align*}
&\text{両辺の同じ次数の項の係数を比較すると、} \\[ 5pt ]
&\quad \begin{cases} a+b+c&=0 &\quad \text{…①} \\ -3a-5b-4c&=0 &\quad \text{…②} \\ 2a+6b+3c&=6 &\quad \text{…③} \end{cases}
\end{align*}

連立方程式を見ると、明らかに計算が面倒そうな式です。もちろん、このくらいの連立方程式であれば、解けて当たり前の計算ですが、それでも係数比較法で扱った問題の式より面倒なのは確かです。加減法を用いて解きます。

連立方程式の計算
\begin{align*}
&\quad \begin{cases} a+b+c&=0 &\quad \text{…①} \\ -3a-5b-4c&=0 &\quad \text{…②} \\ 2a+6b+3c&=6 &\quad \text{…③} \end{cases} \\[ 5pt ]
&\text{②+③より} \\[ 5pt ]
&\quad -a+b-c=6 \quad \text{…④} \\[ 5pt ]
&\text{①+④より} \\[ 5pt ]
&\quad 2b=6 \quad \text{よって} \ b=3 \quad \text{…⑤} \\[ 5pt ]
&\text{①×4+②より} \\[ 5pt ]
&\quad a-b=0 \quad \text{よって} \ a=3 \quad \text{…⑥} \\[ 5pt ]
&\text{①,⑤,⑥より} \\[ 5pt ]
&\quad 3+3+c=0 \quad \text{よって} \ c=-6 \\[ 5pt ]
&\text{したがって、} \\[ 5pt ]
&\quad a=3 \ , \ b=3 \ , \ c=-6
\end{align*}

連立方程式のすべての式に3つの定数が含まれるので、代入法よりも加減法の方が計算しやすいでしょう。

数値代入法で解く場合

係数比較法であれば面倒な計算になりますが、数値代入法であれば驚くほど簡単に計算することができます。

例題
\begin{align*}
&\text{次の等式が $x$ についての恒等式となるように、} \\[ 5pt ]
&\text{定数 $a \ , \ b \ , \ c$ の値を定めよ。} \\[ 5pt ]
&\quad a(x-1)(x-2)+b(x-2)(x-3)+c(x-3)(x-1) = 6
\end{align*}

与式をよく観察して、簡単な形の式を導出できそうな数値を代入しましょう。各項が因数分解されていることに注目して、数値を代入します。

数値を x に代入する
\begin{align*}
&\text{与式が $x$ についての恒等式であるならば、} \\[ 5pt ]
&\text{$x$ にどのような値を代入しても等式が成り立つので、} \\[ 5pt ]
&\text{$x=1$ を代入して} \\[ 5pt ]
&\quad 2b=6 \\[ 5pt ]
&\text{$x=2$ を代入して} \\[ 5pt ]
&\quad -c=6 \\[ 5pt ]
&\text{$x=3$ を代入して} \\[ 5pt ]
&\quad 2a=6 \\[ 5pt ]
&\text{よって、} \\[ 5pt ]
&\quad a=3 \ , \ b=3 \ , \ c=-6
\end{align*}

とても簡単な形の式を導出できるので暗算できます。ただ、ここで終わってはいけません。数値代入法では、自分に都合の良い数値を代入したので、あくまでも代入した数値に対して等式が成り立つように定めた(必要条件)だけです。

このままでは、他の数値について等式が成り立つことを何も保証していません。そこで、係数を求めた後、与式が恒等式になることを必ず確認(十分条件)しなければなりません。

求めた係数を左辺に代入して、与式が恒等式となることを実際に確かめます。

与式が恒等式であることの確認
\begin{align*}
&\text{逆に、このとき与式の左辺は} \\[ 5pt ]
&\qquad 3(x-1)(x-2)+3(x-2)(x-3)-6(x-3)(x-1) \\[ 5pt ]
&\quad = 3(x^{\scriptsize{2}}-3x+2)+3(x^{\scriptsize{2}}-5x+6)-6(x^{\scriptsize{2}}-4x+3) \\[ 5pt ]
&\quad = 6 \\[ 5pt ]
&\text{となり、右辺と一致するので、与式は恒等式となる。} \\[ 5pt ]
&\text{したがって、} \\[ 5pt ]
&\quad a=3 \ , \ b=3 \ , \ c=-6
\end{align*}

「逆に」以下については別解があります。

与式が恒等式であることの確認(別解)
\begin{align*}
&\text{このとき、等式の両辺は $2$ 次以下の整式であり、} \\[ 5pt ]
&\text{異なる $3$ 個の $x$ の値に対して等式が成り立つ。} \\[ 5pt ]
&\text{よって、この等式は恒等式である。} \\[ 5pt ]
&\text{したがって、} \\[ 5pt ]
&\quad a=3 \ , \ b=3 \ , \ c=-6
\end{align*}

別解は、恒等式の性質その2から言えることです。

恒等式の性質その2
$P \ , \ Q$ が $x$ についての $n$ 次以下の整式であるとき、等式 $P=Q$ が $(n+1)$ 個の異なる $x$ の値に対して成り立つならば、等式 $P=Q$ は $x$ についての恒等式である。

別解の方が答案としては簡潔になりますが、実際に確認しているわけではないので、計算ミスに気づけません。ですから、実際に与式が恒等式であることを確認する方が無難でしょう。

次は、恒等式の係数比較法を扱った問題を実際に解いてみましょう。

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