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式と証明|不等式の式変形でやってよいこと、やってはいけないことについて

数学2 式と証明アイキャッチ03 数学II

今回は、不等式を変形するとき、やってよいこと、やってはいけないことについて学習しましょう。等式と違って、不等式は基本的に大小関係のある式です。ですから、等式よりも注意して扱う必要があります。

特に、文字を含む不等式であれば、大小関係がわかりにくくなります。ですから、気付かないうちに誤った式変形をすることがあります。式変形でやってよいこと、やってはいけないことをしっかり理解しておくことが大切です。

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不等式の変形

不等式の変形については、数学1の単元ですでに学習しています。

例えば、1つの不等式があるとき、以下のような式変形が可能です。

  • 両辺に c を加える、または両辺から c を引く ⇒ 不等号の向きはそのまま
  • 両辺に c を掛ける、または両辺を c で割る ⇒ c の符号によって不等号の向きが変わる

これらは不等式の基本的な性質です。これらを踏まえて式変形をするわけですが、両辺が文字を含む式になると正負が分かりにくくなるので、油断すると間違えてしまいます。

ここでは、不等式の式変形で、やってよいこと、やってはいけないことをいくつか紹介します。ここでの「やってよいこと」とは、式変形しても不等式が成り立つ事柄で、条件によって結果が異なることがあっても規則性のある事柄です。

また、「やってはいけないこと」とは、式変形によって不等号が成り立たなくなる事柄で、規則性のない事柄です。想定している式変形は、以下の事柄です。

  1. 1つの不等式を式変形する場合
    1. 両辺の逆数をとる
    2. 両辺を平方する、両辺の平方根をとる
  2. 2つの不等式を式変形する場合
    1. 辺々を加える
    2. 辺々を掛ける
    3. 辺々を引く、辺々を割る

1つの不等式を式変形する場合

1つの不等式を式変形する場合です。この場合、両辺の逆数をとる変形や、両辺を平方する、両辺の平方根をとる変形をすることがあります。

両辺の逆数をとる

両辺の逆数をとる」という変形は、等式でもよく用いられます。等式では何も問題ありませんが、不等式では気を付けましょう。不等式では、両辺が同符号か異符号かによって結果が異なります。

まず、両辺が同符号のときです。

\begin{align*}
&\text{$a \ , \ b$ が同符号のとき} \\[ 5pt ]
&\quad a \gt b \Longleftrightarrow \frac{1}{a} \lt \frac{1}{b} \\[ 10pt ]
&\text{例) 不等号の向きが変わる} \\[ 5pt ]
&\quad 10 \gt 7 \Longleftrightarrow \frac{1}{10} \lt \frac{1}{7} \\[ 10pt ]
&\quad -5 \gt -13 \Longleftrightarrow -\frac{1}{5} \lt -\frac{1}{13}
\end{align*}

両辺が同符号のとき、逆数をとると絶対値の大小関係が逆転します。ですから、もとの大小関係とは逆になり、不等号の向きが変わります

次に、両辺が異符号のときです。

\begin{align*}
&\text{$a \ , \ b$ が異符号のとき} \\[ 5pt ]
&\quad a \gt b \Longleftrightarrow a \gt 0 \ , \ b \lt 0 \\[ 10pt ]
&\quad \Longleftrightarrow \frac{1}{a} \gt 0 \ , \ \frac{1}{b} \lt 0 \Longleftrightarrow \frac{1}{a} \gt \frac{1}{b} \\[ 10pt ]
&\text{例) 不等号の向きが変わらない} \\[ 5pt ]
&\quad 5 \gt -7 \Longleftrightarrow \frac{1}{5} \gt -\frac{1}{7}
\end{align*}

両辺が異符号のとき、逆数をとっても正の数は正の数のままで、負の数は負の数のままです。もとから正負の違いがあるので、大小関係は変わらず、不等号の向きは変わりません

両辺の逆数をとる両辺が同符号か異符号かによって結果が異なる。
条件「両辺が同符号か異符号か」を確認してからやる。

不等式の式変形では、不等号の向きを間違うことが多いですが、例のように具体的な数を用いて考えると、些細なミスを事前に防ぐことができます。特に、負の数どうしだとよく間違えるので注意しましょう。

両辺を平方する、両辺の平方根をとる

両辺を平方する、両辺の平方根をとる」という変形も、等式であれば問題ありませんが、不等式では注意する必要があります。

両辺を平方したり、両辺の平方根をとるには、平方するものが正であれば、右向きの変形でも左向きの変形でも不等号はそのままで変わりません。

\begin{align*}
&\text{$a \gt 0 \ , \ b \gt 0$ のとき} \\[ 5pt ]
&\quad a \gt b \Longleftrightarrow a^{\scriptsize{2}} \gt b^{\scriptsize{2}} \\[ 10pt ]
&\text{例) 平方根の正負が不明} \\[ 5pt ]
&\quad 5 \gt 3 \quad \text{ならば} \quad 25 \gt 9 \\[ 10pt ]
&\text{は成り立つが、} \\[ 5pt ]
&\text{$\sqrt{9} = \pm 3 \ , \ \sqrt{25} = \pm 5$ より} \\[ 5pt ]
&\quad 9 \gt 25 \quad \text{ならば} \quad 5 \gt 3 \\[ 10pt ]
&\text{は成り立つとは一概に言えない。}
\end{align*}

なお、両辺の平方根をとるとき、平方根(平方するもの)が正か負か分からなければ、不等号の向きが決まらないので注意しましょう。

また、平方するものが負であったり、両辺が異符号であったりすると、両辺を平方したとき、不等号の向きは変わったり変わらなかったりします。

\begin{align*}
&\text{例) 不等号の向きに規則性がない} \\[ 5pt ]
&\quad 5 \gt -3 \quad \text{ならば} \quad 25 \gt 9 \\[ 10pt ]
&\quad 3 \gt -5 \quad \text{ならば} \quad 9 \lt 25
\end{align*}

なお、平方根をとるとき、先ほどと同じように平方根(平方するもの)が正か負か分からなければ、不等号の向きが決まりません。

両辺を平方する、両辺の平方根をとる両辺するものがともに正であれば、不等号はそのままで良い。
条件「平方するものが正」を確認してからやる。

2つの不等式を式変形する場合

辺々を加える

辺々を加えるとは、左辺どうし、右辺どうしを足し算することです。2つの不等式について、辺々を加えるには、不等号が同じ向きに揃っていることが条件です。この条件を守っていれば、辺々を加えても不等号の向きは変わりません

\begin{align*}
&\quad a \gt b \ , \ c \gt d \quad \text{ならば} \quad a+c \gt b+d \\[ 5pt ]
&\text{例) 不等号の向きが変わらない} \\[ 5pt ]
&\quad 7 \gt 2 \ , \ 5 \gt 1 \quad \text{ならば} \\[ 5pt ]
&\qquad \quad 7+5 \gt 2+1 \quad \text{すなわち} \quad 12 \gt 3 \\[ 10pt ]
&\quad -5 \gt -13 \ , \ 5 \gt 1 \quad \text{ならば} \\[ 5pt ]
&\qquad -5+5 \gt -13+1 \quad \text{すなわち} \quad 0 \gt -12
\end{align*}

両辺が同符号か異符号かにかかわらず、不等号の向きを揃えておけば、辺々を加えても構いません。

辺々を加える不等号の向きを揃えて、辺々を加えて良い。
不等号の向きを揃えれば、無条件でやってよい。

辺々を掛ける

2つの不等式について、辺々を掛けるには、各辺がすべて正であることが条件です。この条件があれば、辺々を掛けても不等号の向きが変わりません

\begin{align*}
&\quad a \gt b \ \underline{\gt 0} \ , \ c \gt d \ \underline{\gt 0} \ \text{ならば} \ ac \gt bd \\[ 5pt ]
&\text{例) 不等号の向きが変わらない} \\[ 5pt ]
&\quad 7 \gt 2 \ ( \gt 0) \ , \ 5 \gt 1 \ ( \gt 0) \ \text{ならば} \\[ 5pt ]
&\qquad 7 \times 5 \gt 2 \times 1 \quad \text{すなわち} \quad 35 \gt 2 \\[ 10pt ]
&\text{例) 条件に合わないと規則性がない} \\[ 5pt ]
&\quad 5 \gt -7 \ , \ 2 \gt -3 \ \text{ならば} \\[ 5pt ]
&\qquad 5 \times 2 = 10 \ , \ -7 \times (-3) =21 \quad \text{より} \quad 10 \lt 21
\end{align*}

各辺がすべて正でなければ、不等号の向きが変わったり変わらなかったりします。つまり、その時々によって結果が異なり、規則性がありません。

辺々を掛ける各辺がすべて正であれば、辺々を掛けて良い。
条件「各辺がすべて正」を確認してからやる。

辺々を引く、辺々を割る

2つの不等式について、辺々を引いたり、辺々を割ったりすると、ほとんどの場合で不等式が成り立ちません。できから、これらの式変形はやってはいけません。

\begin{align*}
&\quad a \gt b \ , \ c \gt d \\[ 5pt ]
&\text{という条件だけで、} \\[ 5pt ]
&\quad a-c \gt b-d \ , \ \frac{a}{c} \gt \frac{b}{d} \\[ 10pt ]
&\text{といった式変形はやってはいけない。} \\[ 10pt ]
&\text{例)} \\[ 5pt ]
&\quad 7 \gt 2 \ , \ 5 \gt 0 \ \text{のとき、} \\[ 5pt ]
&\quad 7-5=2 \ , 2-0=2 \\[ 5pt ]
&\quad \frac{7}{5} = 1.4 \ , \ \frac{2}{0} \\[ 10pt ]
&\text{となり、不等式が成り立たないことがある。}
\end{align*}

両辺が同じ値になれば、不等式ではなく等式になってしまいます。また、0で割る割り算はできません。仮に0でなかったとしても、不等号の向きがその時々で変わり、規則性がありません。ですから、両辺に文字が含まれる場合、むやみに両辺を引いたり、辺々を割ったりしないようにしましょう。

辺々を引く、辺々を割る各辺の大小関係が分かっていても、むやみに式変形しない。
⇒ 確実に成り立つ条件がない限り、やってはいけない。原則、式変形しない方針で。

さいごに

ここで挙げた不等式の式変形は、数学2や数学Bではよく用いるようになります。やって良いことと悪いことをしっかり認識して、正しく式変形を行いましょう。

[ 1 ] 1つの不等式を式変形する場合
両辺の逆数をとる:条件「両辺が同符号か異符号か」を満たせばやってもよい。ただし、条件によって不等号の向きが変わる。
両辺を平方する、両辺の平方根をとる:条件「平方するものがともに正」を満たせばやってもよい。不等号の向きはそのまま。

[ 2 ] 2つの不等式を式変形する場合
辺々を加える:不等号の向きを揃えれば、条件がなくてもやってよい。不等号の向きはそのまま。
辺々を掛ける:条件「各辺がすべて正」を満たせばやってもよい。不等号の向きはそのまま。
辺々を引く、辺々を割る:確実な条件がない限り、原則、やらない。

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