大学入試|大学入学共通テストのポイント(社会の場合)

大学入試

新しい大学入試 大学入学共通テストの傾向と対策

新しい大学入試の名称は「大学入学共通テスト」と言います。

この共通テストで大きな変化があるのは国語と数学ですが、他の教科にも注意が必要です。ここでは、社会の問題を確認してみましょう。

ここが変わる大学入学共通テスト

従来のセンター試験では「用意されている選択肢の中から唯一の正解を選び出す」問題が出題されていました。もちろん、このような問題も出題されますが、それだけではありません。

大学入学共通テストでは、「設問が求めている内容を、自分なりにまとめて表現する」問題も出題されるようになります。このような問題は、国語と数学の記述式問題という形で出題されます。

もちろん記述形式の問題が出題されることは大きな変化ですが、他の教科の変化も忘れてはいけません。

国語と数学の記述式問題は以下のように見送りになることが決まっています。ただ、記述式レベルの思考力や表現力を必要とする問題は出題される可能性はあります。

国語と数学の記述式問題は、2025年度以降の導入が見送りになりました。

大学入試センター:大学入学共通テストの記述式問題の導入見送りについて

文部科学省:大学入学共通テストの記述式問題について

知識が身についているかを問う問題だけではない

従来のセンター試験では、「知識が身についているかを問う」問題が出題されました。

それに対して大学入学共通テストでは、そのような問題だけでなく、「与えられた条件を満たす選択肢を選び出す」問題も出題されます。このような問題では、条件を満たせば良いので、場合によっては複数の正答が存在することがあります。

正答が複数通り成立することから、多様な出題に対応できる深い理解が必要です。また、設問の条件に応じて、知識を活用し論理的に考察できる力も必要です。

従来のセンター試験との違い

  • 知識が身についているかを問う出題だけではない。
  • 与えられた条件を満たす選択肢を選び出す問題の出題が増える。
  • 多様な出題に対応できる深い理解の必要な問題の出題が増える。
  • 設問条件に応じて知識を活用し、論理的に考察できる力を問う出題が増える。

実際に試行調査で出題された問題を確認してみると、これまでのセンター試験よりも難易度の高い問題が増えていることが分かります。これまでよりも念入りな準備が求められています。

社会について、実際の問題で確かめてみましょう。

試行調査から分かるポイント(社会の場合)

画像は平成30年度に行われた試行調査の問題です。ここでは、地理Bと日本史Bを取り上げます。

平成30年度試行調査 地理B

地理Bの大問1問3では、選択肢の文章に引かれた下線部の正誤を判定する問題が出題されています。

正誤判定はセンター試験でも出題されますが、従来と異なるのが赤枠の部分です。「すべて正しい」と「すべて誤り」の選択肢があります。

平成30年度試行調査|地理B大問1問3
選択肢に注意しよう

このような問題では消去法を利用できません。資料と照らし合わせながら、すべての下線部を注意深く読み進めていく必要があります。かなり時間のロスになります。

また、中途半端な知識では正誤を判定できないので、学習する事柄に対して深い理解が必要です。そして、知識を活用して、論理的に考察しなければなりません。

問題のねらい

ちなみに、大問1問3について、主に問われている資質・能力や、問題の概要は以下のようになっています。

主に問いたい資質・能力

  • 知識・技能:南アメリカ大陸における降水量とその要因についての理解。地理情報を読み取る技能。
  • 思考力・判断力・ 表現力:事象が生起している場所の特徴をとらえ考察することができる。

小問の概要

降水の季節変化と地図上の位置から気候の特徴をとらえ、各地点における降水に影響する気候因子を考察する。

平成30年度試行調査 日本史B

日本史Bの大問1問1,2では、生徒が主題を決めてまとめた年表に関する問題です。

年表に書かれた事柄から、主題を見抜かなければなりません。そのためには主題についての理解が必要です。この問いでは、開発史や災害史についての理解を求められています。

平成30年度試行調査|日本史B大問1問1,2
主題を見抜こう

こういった特定の主題でまとめられた年表では、歴史的な事柄の共通点や相違点を見出すことを求められます。日頃から、共通点相違点を意識しながら覚える学習に取り組んでいるかが問われます。

問題のねらい

ちなみに、大問1問1について、主に問われている資質・能力や、問題の概要は以下のようになっています。

主に問いたい資質・能力

  • 知識・技能:各時代における開発史や災害史についての理解。年表から目的に応じた情報を読み取る技能。
  • 思考力・判断力・ 表現力:複数の歴史的事象を比較して共通性や差異をとらえることができる。(諸事象の比較)

小問の概要

古代から現代に至る開発・災害に関わる年表に示された歴史的事象の共通性を見いだし、設定された主題について考察する。

同じく、大問1問2について、主に問われている資質・能力や、問題の概要は以下のようになっています。

主に問いたい資質・能力

  • 知識・技能:各時代の具体的な開発や災害に関わる事象と歴史的背景の理解。
  • 思考力・判断力・ 表現力:なし

小問の概要

例示された歴史的事象が生じた時期をとらえる。

共通テストでは瞬時に正答を見抜けない問題が増える

社会などの文系科目は暗記科目だとよく言われます。ですから、学習事項を覚えさえすれば何とかなるイメージを持っている人は少なくありません。しかし、その認識だとマズいことが試行調査の問題から分かります。

地理Bや日本史Bの問題を見て分かるように、瞬時に正答を見抜けない問題が増えているのが良い例です。このような問題を解きこなすには、単に用語を知っている程度の知識レベルでは足りないことが分かります。認識を改める必要があるでしょう。

瞬時に正答を見抜けない問題では、知識の活用力と考察力が問われています。このような問題に対しては、以下のことがポイントになります。

瞬時に正答を見抜けない問題に対応するために必要なこと

  • 出来事の背景や影響、意義や特徴といった「教科書の行間」にも行き届いた正確な知識
  • 文章を正確に読み解き、正誤のポイントを見極める力
  • 初見の資料や独特の切り口での問いに対する対応力

このような力を身につけるには、「覚えただけ」で終わってはいけないということです。そこからさらに知識の活用力を鍛える学習に取り組まなければなりません。

さいごに

正誤判定の問題では、消去法が通用しない問題が出題される割合が増えそうです。これに対応するには、「誤った選択肢では、どこが誤りなのか、なぜ誤りなのか」をよくよく吟味する習慣が必要です。

このことは、復習する際のポイントとして散々言われてきたことです。要するに、答えが合っているから大丈夫というような、いい加減な学習では解けない問題が増えるということです。

結論重視よりも過程重視の学習スタイルが求められています。

中堅の学力レベル帯の人たちにとっては、より二極化が進む可能性が高いので、死活問題かもしれません。どちら側になるかは、日常学習の内容次第です。

もちろん、すべての問題が上述のようになるわけではないでしょう。しかし、共通テストが「思考力・判断力・表現力」を求めている以上、出題の割合としては増えると考えておいた方が無難でしょう。

今の学習スタイルが、要求される力が身につくものであるかを今一度、確認する必要があるかもしれません。

大学入学共通テストの傾向や対策に役立つ書籍

記述力や思考力を鍛えよう

記述力や思考力は、日頃からの訓練の成果です。短期間であれば、コツくらいは掴めるかもしれません。しかし、完全に習得するとなると時間が掛かるでしょう。だからこそ価値があります。

身に付けるのは簡単ではありませんが、育成の仕方を知っておくことは大切です。日常学習の際に、無自覚にこなすのではなく、意識的に取り組むことができるからです。

大学入試を知ろう

仕組みを知らないまま受験するのは、あまり良いことだとは思いません。情報がなければ適切な対策を立てられないからです。

期間や難易度などの情報を知らなければ、中途半端な準備しかできません。また、進学したい大学や学部についての情報がなければ、有名大学に進学できたとしても後悔するかもしれません。

少なくとも高校3年間を準備に費やします。また、自分の将来にも大いに関わります。義務教育ではないので、先生や親任せでなく、自分で行動しなければなりません。後悔しないためにも情報収集をしっかり行いましょう。