確率|確率の基本性質について
2つの事象が互いに排反(排反事象)となる例
次の確率を求めてみましょう。
例題2
赤玉 $4$ 個と白玉 $6$ 個が入った袋から $3$ 個の玉を同時に取り出すとき、$3$ 個とも同じ色である確率
根元事象を正しく定めよう
試行は「10個の玉が入った袋から3個の玉を同時に取り出す」となります。次は根元事象を定めましょう。
根元事象は「区別した10個の玉から3個の玉を同時に取り出す」になります。
区別した10個の玉から3個の玉を同時に取り出すときの場合の数は、3個の玉の組合せの総数です。組合せの総数を求めます。
3個の玉の組合せの総数
$10$ 個の玉から $3$ 個の玉を同時に取り出すときの場合の数は
\begin{align*} \quad {}_{10} \mathrm{ C }_3 &= \frac{10 \cdot 9 \cdot 8}{3!} \\[ 7pt ] &= \frac{10 \cdot 9 \cdot 8}{3 \cdot 2} \\[ 7pt ] &= 120 \ \text{(通り)} \end{align*}3個の玉の組合せの総数は120通りあり、この組合せの1つ1つが根元事象になります。
また、根元事象が120個あり、これが全事象の要素になります。これより起こりうるすべての場合の数は120通りです。
どの玉も同じ程度に引かれる可能性があるので、色にかかわらず10個の玉を区別して扱います。どうしても区別できない場合には、赤1、赤2などと番号を付けると良いでしょう。
事象の要素を数え上げよう
根元事象が定まったので、3個とも同じ色である事象を考えます。3個とも同じ色になるのは、赤色だけの場合と白色だけの場合の2通りあります。つまり、3個とも同じ色である事象は、3個とも赤色または白色である事象と言い換えることができます。
この3個とも赤色または白色である事象は、3個とも赤色である事象と3個とも白色である事象の和事象です。ですから、3個とも赤色である事象と3個とも白色である事象とが互いに排反であるかどうかを確認しなければなりません。
3個とも赤色である事象と3個とも白色である事象は、同時に起こることはありません。ですから、この2つの事象は互いに排反です。
2つの事象が互いに排反であるとき、2つの事象の積事象は存在しません。集合で言えば、共通の要素を持たないので、共通部分が存在しないということです。
3個とも同じ色である事象が起こる場合の数を考えます。
3個とも同色である組合せの総数
$10$ 個の玉から $3$ 個の玉を同時に取り出すとき、$3$ 個とも赤色である場合の数は
\begin{align*} \quad {}_4 \mathrm{ C }_3 &= {}_{4} \mathrm{ C }_1 \\[ 7pt ] &= 4 \ \text{(通り)} \end{align*}$10$ 個の玉から $3$ 個の玉を同時に取り出すとき、$3$ 個とも白色である場合の数は
\begin{align*} \quad {}_6 \mathrm{ C }_3 &= \frac{6 \cdot 5 \cdot 4}{3!} \\[ 7pt ] &= \frac{6 \cdot 5 \cdot 4}{3 \cdot 2} \\[ 7pt ] &= 20 \ \text{(通り)} \end{align*}3個とも赤色である事象が起こる場合の数は4通りです。また、3個とも白色である事象が起こる場合の数は20通りです。
確率を求めよう
以上をもとに3個とも同じ色である確率を求めます。
例題2の解答例
$10$ 個の玉から $3$ 個の玉を同時に取り出すとき、場合の数は全部で ${}_{10} \mathrm{ C }_3$ 通り。
また、$3$ 個とも赤色である場合の数は ${}_4 \mathrm{ C }_3$ 通りで、$3$ 個とも白色である場合の数は ${}_6 \mathrm{ C }_3$ 通り。
ここで、$3$ 個とも赤色である事象と $3$ 個とも白色である事象は互いに排反である。
したがって、$3$ 個とも同じ色である確率は
\begin{align*} \quad \frac{{}_4 \mathrm{ C }_3}{{}_{10} \mathrm{ C }_3} + \frac{{}_6 \mathrm{ C }_3}{{}_{10} \mathrm{ C }_3} &= \frac{{}_4 \mathrm{ C }_3 + {}_6 \mathrm{ C }_3}{{}_{10} \mathrm{ C }_3} \\[ 7pt ] &= \frac{4+20}{120} \\[ 7pt ] &= \frac{24}{120} \\[ 7pt ] &= \frac{1}{5} \end{align*}2つの事象が互いに排反であるので、以下の式を使って確率を求めましょう。
2つの事象が互いに排反であるとき
\begin{align*} \quad P \left(A \cup B \right) = P \left(A \right) + P \left(B \right) \end{align*}排反事象のポイントをまとめると以下のようになります。
次は余事象を具体例で考えてみましょう。
余事象を扱った例
次の確率を求めてみましょう。
例題3
赤玉 $4$ 個と白玉 $6$ 個が入った袋から $3$ 個の玉を同時に取り出すとき、少なくとも $1$ 個が赤玉である確率
根元事象を正しく定めよう
玉の個数や取り出し方が例題2と同じなので、試行や根元事象も例題2と同じです。
試行は「10個の玉が入った袋から3個の玉を同時に取り出す」です。また、根元事象は「区別した10個の玉から3個の玉を同時に取り出す」です。
事象の要素を数え上げよう
取り出した3個のうち、少なくとも1個が赤玉である組合せは3通りあります。ですから、その事象は次のようになります。
少なくとも1個が赤玉である事象
- 3個のうち、赤玉が1個である事象
- 3個のうち、赤玉が2個である事象
- 3個のうち、赤玉が3個である事象
これらの事象をまとめると、3個のうち、赤玉が1個または2個または3個である事象と言い換えることができます。
赤玉の個数で場合分けした3つの事象は、同時に起こることはありません。ですから3つの事象は互いに排反です。
以上のことから、取り出した3個のうち、少なくとも1個が赤玉である確率は、3つの事象が起こる確率の和で求めることができます。素直に確率を求めようとすればこれでも良いのですが、場合分けをする必要があり、少々面倒です。
このような場合分けを必要とする確率では、余事象を利用して間接的に求めるのが一般的です。
全事象から3個とも白色である事象を除けば、その残りは最低でも1個が赤玉である事象になります。逆の発想で所望の確率を求めるのが、余事象を利用するときの考え方です。
取り出した3個のうち、少なくとも1個が赤玉である事象の余事象は、3個とも白色である事象です。3個とも白色である事象が起こる場合の数を求めます。
3個とも白色である組合せの総数
$10$ 個の玉から $3$ 個の玉を同時に取り出すとき、$3$ 個とも白色である場合の数は
\begin{align*} \quad {}_6 \mathrm{ C }_3 &= \frac{6 \cdot 5 \cdot 4}{3!} \\[ 7pt ] &= \frac{6 \cdot 5 \cdot 4}{3 \cdot 2} \\[ 7pt ] &= 20 \ \text{(通り)} \end{align*}、白玉6個から3個を選ぶので、場合の数は20通りになります。
確率を求めよう
以上をもとに少なくとも1個は赤玉である確率を求めます。
例題3の解答例
$10$ 個の玉から $3$ 個の玉を同時に取り出すとき、場合の数は全部で ${}_{10} \mathrm{ C }_3$ 通り。
また、$3$ 個とも白色である場合の数は ${}_6 \mathrm{ C }_3$ 通り。
したがって、少なくとも $1$ 個が赤色である確率は
\begin{align*} \quad 1-\frac{{}_6 \mathrm{ C }_3}{{}_{10} \mathrm{ C }_3} &= 1-\frac{6 \cdot 5 \cdot 4}{10 \cdot 9 \cdot 8} \\[ 7pt ] &= 1-\frac{1}{6} \\[ 7pt ] &= \frac{5}{6} \end{align*}全事象が起こる確率から、余事象が起こる確率を引いて計算します。
なお、起こりうるすべての場合の数は、全事象の要素の個数に等しいので、全事象が起こる確率は1です。
問題文に「少なくとも~」という文言があったら、余事象を考えよう。
余事象のポイントをまとめると以下のようになります。
次は、積事象・和事象、余事象を扱った問題を実際に解いてみましょう。