複素数と方程式|係数に虚数のある2次方程式について

数学2

係数に虚数のある2次方程式を扱った問題を解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

\begin{align*} &\text{$x$ の方程式} \\[ 5pt ] &\quad \left( 1+i \right)x^{\scriptsize{2}}+\left(k-i \right)x+\left(k-i+2i \right)=0 \\[ 7pt ] &\text{が実数解をもつように、実数 $k$ の値を定めよ。} \end{align*}

問題文を注意深く読み、与式をよく観察しましょう。

方程式の係数や定数項には、虚数単位iが含まれています。与式をxについての2次方程式と見なしたり、判別式を用いたりすることがないように気を付けましょう。

問の解答・解説

方程式が実数解をもつ」という文言から、実数解を自分で定義します。この実数解を方程式に代入しても、等式が成り立つことを利用します。

等式の左辺は複素数として扱い、等式を実部と虚部に分けて整理します。

問の解答例 1⃣

\begin{align*} &\text{方程式の実数解を $\alpha$ とすると} \\[ 5pt ] &\quad \left( 1+i \right){\alpha}^{\scriptsize{2}}+\left(k-i \right){\alpha}+\left(k-i+2i \right)=0 \\[ 7pt ] &\text{これを整理して} \\[ 5pt ] &\quad \left( {\alpha}^{\scriptsize{2}}+k{\alpha}-k+1 \right)+ \left( {\alpha}^{\scriptsize{2}}-{\alpha}-2 \right)i =0 \end{align*}

2次方程式の実数解の話から複素数の話へ置き換えます。次は、実部と虚部がそれぞれ実数であることを利用します。

問の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \left( {\alpha}^{\scriptsize{2}}+k{\alpha}-k+1 \right)+ \left( {\alpha}^{\scriptsize{2}}-{\alpha}-2 \right)i =0 \\[ 7pt ] &\text{$\alpha \ , \ k$ は実数であるので} \\[ 5pt ] &\quad {\alpha}^{\scriptsize{2}}+k{\alpha}-k+1 \ , \ {\alpha}^{\scriptsize{2}}-{\alpha}-2 \\[ 7pt ] &\text{も実数である。よって} \\[ 5pt ] &\quad {\alpha}^{\scriptsize{2}}+k{\alpha}-k+1 =0 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\quad {\alpha}^{\scriptsize{2}}-{\alpha}-2 =0 \quad \cdots \text{②} \end{align*}

複素数の相等を利用をして、①,②式を導きます。実部と虚部に相等する式が実数であることを必ず記述しておきましょう。

あとは、①,②式を連立して解きます。加減法や代入法を利用する前に、②式を因数分解できることに注目しましょう。

問の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad {\alpha}^{\scriptsize{2}}+k{\alpha}-k+1 =0 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\quad {\alpha}^{\scriptsize{2}}-{\alpha}-2 =0 \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\text{②より} \\[ 5pt ] &\quad \left( {\alpha}+1 \right) \left( {\alpha}-2 \right)=0 \\[ 7pt ] &\quad \therefore \ {\alpha} = -1 \ , \ 2 \end{align*}

②式から、自分で定義した実数解の値を求めることができます。これらを場合分けして、実数kの値をそれぞれ求めます。

問の解答例 4⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad {\alpha}^{\scriptsize{2}}+k{\alpha}-k+1 =0 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\quad {\alpha}^{\scriptsize{2}}-{\alpha}-2 =0 \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \therefore \ {\alpha} = -1 \ , \ 2 \\[ 7pt ] &[1] \ \alpha=-1 \ \text{のとき} \\[ 5pt ] &\text{①から} \\[ 5pt ] &\quad 2-2k =0 \quad \text{よって} \quad k=1 \\[ 7pt ] &[2] \ \alpha=2 \ \text{のとき} \\[ 5pt ] &\text{①から} \\[ 5pt ] &\quad 5+k =0 \quad \text{よって} \quad k=-5 \\[ 7pt ] &[1] \ , \ [2] \ \text{より} \\[ 5pt ] &\quad k=1 \ , \ -5 \end{align*}

本問では、実数解αを先に求めることができました。この実数解を用いて、そのときの実数kの値を求めています。

それに対して例題では、実数kの値が定まったとき(k=1のとき)については、方程式の解が実数解かどうか分かりません。ですから、場合分けという感覚よりも、方程式が本当に実数解をもつかどうかを確認している意味合いがあります。確認してみると、k=1のとき与式は実数解をもたないので、不適となりました。

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さいごにもう一度まとめ

  • 係数や定数項に虚数のある2次方程式では、判別式を使わない。
  • 判別式が使えるのは、係数や定数項が実数のとき。
  • 2次方程式として扱えないときは、実数解を定義して代入し、複素数として扱おう。
  • 複素数を含む等式では、複素数の相等を利用しよう。