2次関数|2次不等式の解法について(応用編)

数学1

2次不等式の解法について・応用編

2次不等式を扱った問題を解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

2次不等式を扱った問題を解いてみよう

問1の解答・解説

問1

次の $2$ 次不等式や連立不等式を解け。

\begin{align*} \quad x^{2}-4x+4 \gt 0 \end{align*}

解く前に確認しておくことが2つあります。

2次不等式を見たら確認しよう

  • 2次の項の係数が正の数であるか
  • 左辺が2次式で、右辺が0であるか

与式を見ると、2次の項の係数が正の数で、右辺が0になっています。これならすぐに解き始めることができます。

与式の左辺に注目すると、左辺を因数分解することができることに気付きます。

問1の解答例

与式の左辺を変形して

\begin{align*} \quad x^{2}-4x+4 &\gt 0 \\[ 7pt ] \quad \left( x-2 \right)^{2} &\gt 0 \end{align*}

左辺がカッコの2乗の形に因数分解できたので、グラフはx軸と接することが分かります。このとき、共有点は1個で、共有点(接点)のx座標は2です。

また、2次関数の値域は、2次不等式からy>0であるので、これに対応するグラフと定義域を考えます。

値域y>0に対応するグラフは共有点を除いた部分です。このことから、2次不等式の解はx=2以外のすべての実数になります。

2次不等式の解 1⃣

$2$ 次不等式

\begin{align*} \quad a{\left( x – \alpha \right)}^{2} \gt 0 \quad ( a \gt 0 ) \end{align*}

の解は

\begin{align*} \quad x=\alpha \ \text{以外のすべての実数} \end{align*}

問1のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。

第1問の解答例
問1のポイントと解答例

問2の解答・解説

問2

次の $2$ 次不等式や連立不等式を解け。

\begin{align*} \quad x^{2}-4x+5 \lt 0 \end{align*}

与式を見ると、2次の項の係数が正の数で、右辺が0になっています。解く準備はできています。ただ、問1と異なるのは、左辺を因数分解できないことです。

因数分解できないので、「2次方程式を作って解の公式で解く・・・」としたいところです。しかし、2次方程式が実数解をもつか不明です。

このようなときは、2次方程式を作ったら判別式の値を調べてみましょう

問2の解答例

\begin{align*} \quad x^{2}-4x+5 \lt 0 \end{align*}

与式より

\begin{align*} \quad x^{2}-4x+5 = 0 \end{align*}

の判別式を $D$ とすると

\begin{align*} \quad D &=\left(-4 \right)^{2}-4 \cdot 1 \cdot 5 \\[ 7pt ] &= 16-20 \\[ 7pt ] &= -4 \\[ 7pt ] \therefore \ &D \lt 0 \end{align*}

判別式の値が負の数になったので、2次方程式は実数解をもちません。このような場合、解の公式を使っても2次方程式を解くことはできません。

なお、2次方程式が実数解をもたないので、グラフとx軸との共有点はありません

判別式の値を調べたら、2次関数の値域を確認します。与式から値域はy<0であるので、これに対応するグラフと定義域を考えます。

グラフを参考にすると、値域y<0に対応するグラフがないことが分かります。このことから、2次不等式の解は解なしになります。

2次不等式の解 7⃣

$2$ 次方程式

\begin{align*} \quad a{x}^{2}+bx+c = 0 \quad ( a \gt 0 ) \end{align*}

が実数解をもたないとき、$2$ 次不等式

\begin{align*} \quad a{x}^{2}+bx+c \lt 0 \end{align*}

の解は、解なし

問2のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。解答例では、左辺を平方完成して、実数の性質から解を求めています。

第2問の解答例
問2のポイントと解答例

問3の解答・解説

問3

次の $2$ 次不等式や連立不等式を解け。

\begin{align*} \quad \begin{cases} {x}^{2}+x-2 \geqq 0 \\ {x}^{2}+x-6 \lt 0 \end{cases} \end{align*}

3問は2次不等式を連立した問題です。連立不等式の場合、加減法や代入法を使って解きません。それぞれの不等式を個別に解きます

個別に求めた解の共通部分が連立不等式の解になります。連立方程式とは解法が異なるので注意しましょう。

連立不等式について
連立不等式の解き方

個別に2次不等式を解くので、実質的には問1,2と変わりません。最後に2つの解の共通部分を探すところだけが異なります。

どちらの不等式の左辺も因数分解できます。共有点を2個もつ場合です。一気に解までもっていきましょう。

問3の解答例

\begin{align*} \quad \begin{cases} {x}^{2}+x-2 \geqq 0 \cdots \text{①} \\ {x}^{2}+x-6 \lt 0 \cdots \text{②} \end{cases} \end{align*}

①の左辺を変形して

\begin{align*} \quad x^{2}+x-2 &\geqq 0 \\[ 7pt ] \quad \left(x+2 \right)\left(x-1 \right) &\geqq 0 \end{align*}

よって、①の解は

\begin{align*} \quad x \leqq -2 \ , \ 1 \leqq x \end{align*}

②の左辺を変形して

\begin{align*} \quad x^{2}+x-6 &\lt 0 \\[ 7pt ] \quad \left(x+3 \right)\left(x-2 \right) &\lt 0 \end{align*}

よって、②の解は

\begin{align*} \quad -3 \lt x \lt 2 \end{align*}

したがって、連立不等式の解は

\begin{align*} \quad -3 \lt x \leqq -2 \ , \ 1 \leqq x \lt 2 \end{align*}

問3のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。

第3問の解答例
問3のポイントと解答例

実数解が得られるとは限らないことに注意しよう

今までは、「自分たちが扱っている範囲の数(たとえば整数)が解として得られる」ことが当たり前という感覚があったと思います。

しかし、高校数学になると、どんな数かイメージできない平方根をはじめ、実数の範囲にない数も考えなくてはならなくなります。

特に、2次方程式を扱う場合には、判別式の値を先に調べることが効果的です。

このような工夫を取り入れることで二度手間を回避することができます。そのためには、各単元とのつながりを意識して学習するのが大切だろうと思います。

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関数を上手に扱えるようになると、高校での数学はとてもラクになると思います。中学でも関数を扱いましたが、方程式や不等式との関係までは学習していません。

関数単体でなら何とかなっていても、方程式や不等式との関係性を理解しないと、高校では厳しくなります。逆に関係性が掴めれば、今までの苦労が何だったのかと思えるようになるでしょう。

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2次関数は、高校数学で学習する関数の中で最も基本的なものです。ですから、苦手意識をもたないようにしっかりと取り組んでおいた方が良いでしょう。

参考書や問題集を上手に利用しましょう。その他にも以下のような教材があります。

大事なことは、自分に合った教材を徹底的に活用することです。どの教材を選ぶにしても、自分の目で中身を確認し、納得してから購入することが大切です。

さいごに、もう一度、頭の中を整理しよう

  • 2次不等式から値域を求めて、値域に対応するグラフから定義域を求める。
  • 値域に対応する定義域が2次不等式の解。
  • 2次不等式を解くとき、左辺の因数分解の確認からスタートしよう。
  • 左辺を因数分解できれば、2次不等式の解を一気に求めよう。
  • 左辺を因数分解できなければ、共有点の個数を2次方程式の判別式の値で調べてみる。
  • 判別式の値がD>0であれば、解の公式で共有点のx座標を求めよう。
  • 判別式の値がD<0であれば、共有点がないので、グラフと値域で定義域を求めよう。