中学数学|正負の数の乗除算について

中学数学

正負の数の乗除算をはじめから学びなおす

正負の数の加減算の次は、正負の数の乗除算を攻略します。

乗除算とは、乗算(乗法)除算(除法)をまとめた言い方です。簡単な言い方だと、掛け算や割り算のことです。

加減算では減算を加算に置き換えるので、減算する必要がなくなりました。

それに対して、正負の数の乗除算ではどうなのでしょうか。その辺りのことを意識しながら学習しましょう。

正負の数の乗除算

加減算のときと同じように、乗除算でも具体例を挙げながら言葉に置き換えて考えてみます。

「速さ」×「時間」=「道のり」で分かるのは絶対値

道のり、速さ、時間を例に正負の数の乗算について考えます。

たとえば、Aさんが自転車に乗ってある目的地に行くとします。速さは分速10mとします。

道のりは速さと時間の積で求めることができるので、たとえば3分前だろうと、3分後だろうとしても、道のりは10×3=30mです。

つまり、この計算結果で分かるのは、分速10mで3分間だけ移動した道のりです。

では、3分前や3分後の位置を知りたい場合はどうでしょうか。

この場合、進む向きが分からないので、この計算結果だけでは位置を特定することができません。

計算結果だけでなく3分前や3分後の条件を加味して、現在地から30mだけ先や現在地よりも30m手前というふうに、2段階のステップを踏む必要があります。

これまでのように正負の数を使わない計算では、移動距離、つまり大きさ(絶対値のこと)だけを求める計算で、現在地との相対的な位置を求めることができません。

符号の定義をしっかりと

今度は正負の数を使って考えてみます。

正負の数では符号を用いるので、符号の示す向きを予め決めておく必要があります。現在地(出発地)を基準の位置0mとして、現在地から右向きを正の向き、その左向きを負の向きとします。

このとき、正の向きに分速10mは分速+10m、負の向きであれば分速-10mと表せます。

また、現在地の時刻を基準とすると、現在地の時刻に対して、3分後ならば+3分、3分前は-3分と表せます。

このように正負の数を用いると、数にいくつかの意味を持たせることができます。符号の扱いに慣れると、数式を扱うのが非常に楽になります。

正負の数の乗算

正の数どうしの乗算(分速+10m,+3分)

Aさんは現在地から右向きに向かって分速10m(分速+10m)で移動するとします。Aさんの現在地に対する3分後(+3分)の位置を考えてみます。

先ほど求めたように、分速10mで3分間だけ移動したときの道のりは30mでした。ですから3分後のとき、現在地に対して右向きに30mの位置(+30m)にいます。

正の数どうしの乗算
正の数どうしの乗算

このことを正負の数を用いると、「分速+10mで+3分のとき、(現在地に対して)+30mの位置にいる」と表せます。

このように正負の数を用いると、基準に対する向きと距離、つまり基準に対する位置が分かるようになります。

また、この結果から、以下のような乗算の式が得られます。

道のり・速さ・時間の例から分かること 1⃣

\begin{align*} \quad (+10) \times (+3) =+30 \end{align*}

$2$ 数の符号が同符号(+)のとき、積の符号は正の符号(+,プラス)

$2$ 数の符号が同符号のとき、積の絶対値は $2$ 数の絶対値の積

物理でも、直線運動などでは正負の数を利用するので、予備知識として持っておくと良いでしょう。

正の数と負の数の乗算(分速+10m,-3分)

今度は現在地に到着する3分前(-3分)の位置を考えます。

道のりは30mでしたが、3分前なので現在地に対して左向きに30mの位置(-30m)にいます。

正の数と負の数の乗算
正の数と負の数の乗算

このことを正負の数を用いると、「分速+10mで-3分のとき、(現在地に対して)-30mの位置にいる」と表せます。

また、この結果から、以下のような乗算の式が得られます。

道のり・速さ・時間の例から分かること 2⃣

\begin{align*} \quad (+10) \times (-3) =-30 \end{align*}

$2$ 数の符号が異符号(+と-)のとき、積の符号は負の符号(-,マイナス)

$2$ 数の符号が異符号のときでも、積の絶対値は $2$ 数の絶対値の積

負の数と正の数の乗算(分速-10m,+3分)

さらにAさんは、現在地から左向きに向かって分速10m(分速-10m)で移動するとします。Aさんの現在地に対する3分後(+3分)の位置を考えてみます。

なお正の向きと負の向きの設定は変わりませんが、自転車の進む向きに合わせて時の前後が変わることに注意しましょう。

道のりは30mですが、3分後なので現在地に対して左向きに30mの位置(-30m)にいます。

負の数と正の数の乗算
負の数と正の数の乗算

このことを正負の数を用いると、「分速-10mで+3分のとき、(現在地に対して)-30mの位置にいる」と表せます。

また、この結果から、以下のような乗算の式が得られます。

道のり・速さ・時間の例から分かること 3⃣

\begin{align*} \quad (-10) \times (+3) =-30 \end{align*}

$2$ 数が異符号(-と+)のとき、積の符号は負の符号(-,マイナス)

$2$ 数が異符号のときでも、積の絶対値は $2$ 数の絶対値の積

負の数どうしの乗算(分速-10m,-3分)

同様にAさんは左向きに分速10m(分速-10m)で移動しますが、Aさんの現在地に対する3分前(+3分)の位置を考えてみます。

道のりは30mとなり、3分前なので現在地に対して右向きに30mの位置(+30m)にいることになります。

負の数どうしの乗算
負の数どうしの乗算

このことを正負の数を用いると、「分速-10mで-3分のとき、現在地に対して+30mの位置にいる」と表せます。

また、この結果から、以下のような乗算の式が得られます。

道のり・速さ・時間の例から分かること 4⃣

\begin{align*} \quad (-10) \times (-3) =+30 \end{align*}

$2$ 数が同符号(-と-)のとき、積の符号は正の符号(+,プラス)

$2$ 数が同符号のとき、積の絶対値は $2$ 数の絶対値の積

乗算から分かるルール

「速さ」×「時間」=「道のり」の公式に正負の数を用いると、向きと基準からの距離、つまり基準に対する位置という情報が得られます。

先ほどの例から導かれた乗算は以下のようになりました。

道のり・速さ・時間の例から分かること(まとめ)

\begin{align*} &1. \quad (+10) \times (+3) =+30 \\[ 7pt ] &2. \quad (+10) \times (-3) =-30 \\[ 7pt ] &3. \quad (-10) \times (+3) =-30 \\[ 7pt ] &4. \quad (-10) \times (-3) =+30 \end{align*}

この結果から、正負の数の乗算には以下のような規則性があります。

正負の数の乗算の規則性

  • 2数の符号が同符号のとき、積の符号は正の符号(+,プラス)
  • 2数の符号が異符号のとき、積の符号は負の符号(-,マイナス)
  • 積の数字(=絶対値)は、2数の絶対値の積。

この規則性を利用すれば、正負の数の乗算では、加算と同様に符号と絶対値を分けて扱うことができます

正負の数の乗算では、符号と絶対値を分けて扱おう。

正負の数の除算

正負の数の除算を考えます。除算では、割る数の逆数を取れば乗算に置き換えることができます。

ですから、除算でも乗算に置き換えてしまえば、乗算の規則性を利用して計算できるということです。

除算は乗算に置き換えて規則性を利用する

\begin{align*} 1. \quad &\left(+30 \right) \div \left(+3 \right) \\[ 7pt ] = \ &\left(+30 \right) \times \left(+\frac{1}{3} \right) \\[ 7pt ] = \ &+\left(30 \times \frac{1}{3} \right) \\[ 7pt ] = \ &+10 \\[ 15pt ] 2. \quad &\left(+30 \right) \div \left(-3 \right) \\[ 7pt ] = \ &\left(+30 \right) \times \left(-\frac{1}{3} \right) \\[ 7pt ] = \ &-\left(30 \times \frac{1}{3} \right) \\[ 7pt ] = \ &-10 \\[ 15pt ] 3. \quad &\left(-30 \right) \div \left(+3 \right) \\[ 7pt ] = \ &\left(-30 \right) \times \left(+\frac{1}{3} \right) \\[ 7pt ] = \ &-\left(30 \times \frac{1}{3} \right) \\[ 7pt ] = \ &-10 \\[ 15pt ] 4. \quad &\left(-30 \right) \div \left(-3 \right) \\[ 7pt ] = \ &\left(-30 \right) \times \left(-\frac{1}{3} \right) \\[ 7pt ] = \ &+\left(30 \times \frac{1}{3} \right) \\[ 7pt ] = \ &+10 \end{align*}

除算での規則性は乗算と同じなので、除算のままで計算することもできます。

数だけの除算であればそのままでも構いませんが、文字を含む数式になると簡単ではありません。ですから、乗除算を乗算に統一する計算に慣れておきましょう。

乗除算を乗算に統一するメリット

除算を乗算に置き換えるメリットとして、乗算では加算と同じように交換法則結合法則が成り立つことが挙げられます。減算や除算では成り立ちません。

加算と乗算では、交換法則や結合法則が成り立つ。

交換法則や結合法則を上手く利用すれば、計算を暗算で行うことも可能になります。計算する上で効果的なので、加減算ならば加算に、乗除算ならば乗算にそれぞれ統一する習慣を付けることが大切です。

数だけの計算であれば加算や乗算に統一しなくても問題ないかもしれません。しかし、文字を含む整式を扱った計算になると、加算や乗算に統一することで恩恵を得ることができます。

正負の数の乗除算のコツ

乗除算の規則性を考えると、計算結果である積や商の符号は、乗除算する数の符号の組合せで決まることが分かります。

規則性を利用した乗除算の手順は以下のようになります。

乗除算の基本的な手順

  1. 除算を乗算に置き換えて、乗算に統一する。
  2. 乗算する数の符号の組合せから積の符号を決める。
  3. 数の数字(絶対値)だけで積を求める。

ここで大切なのは、符号と数字(=絶対値)を分けて扱うことです。正負の数の計算では基本的な考え方なので、マスターしておきたいところです。

除算でも上の手順で計算できます。しかし、今後は数だけの計算はほとんどありません。必ずと言ってよいほど文字を含みます。ですから、除算を乗算に置き換える習慣を付けておいた方が無難です。

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さいごに、もう一度まとめ

  • 乗除算は乗算に統一して計算。
  • 乗算する数の符号の組み合わせから、積の符号が決まる。
  • 同符号の2数の乗算のとき、積の符号は正の符号(+,プラス)。
  • 異符号の2数の乗算のとき、積の符号は負の符号(-,マイナス)。
  • 積の符号を決めた後、2数の数字(絶対値)だけで積を求める。
  • 正負の数の計算では、符号と文字を分けて扱う視点を持とう。