複素数と方程式|2つの解の関係をもとにした係数の決定について(応用)

数学2

2つの解の関係をもとにした係数の決定を扱った問題を解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

\begin{align*} &\quad \alpha \ , \ \beta \\[ 7pt ] &\text{を $2$ つの解とする $2$ 次方程式} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}}+ax+b=0 \\[ 7pt ] &\text{がある。} \\[ 5pt ] &\quad {\alpha}^{\scriptsize{2}} \ , \ {\beta}^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ] &\text{もこの方程式の $2$ つの解であるような} \\[ 5pt ] &\text{定数 $a \ , \ b$ の値をすべて求めよ。} \end{align*}

問の解答・解説

問で与えられた情報を整理しましょう。

与えられた情報を整理しよう

  • 与えられた2次方程式はx2+ax+b=0。
  • 2つの解α,βをもつ。
  • α2,β2も解にもつ。
  • 求めたいのは、定数a,bの値。

与えられた情報を整理してみましたが、少し違和感を感じるかもしれません。

2次方程式の2つの解はただ1組だけだと思っていたのに、問題文を読むとそうではないようです。与式はα,βとは別にもう1組の解α2,β2ももつようです。

2次方程式を満たす解が複数組あるかどうかの確認は後回しにして、まずは解いてみましょう。

定数a,bは2次方程式の係数や定数項です。2組の解それぞれについて、解と係数の関係を書き出してみましょう。

問の解答例 1⃣

\begin{align*} &\quad x^{\scriptsize{2}}+ax+b=0 \\[ 7pt ] &\text{与式の解が $\alpha \ , \ \beta$ であるので} \\[ 5pt ] &\text{解と係数の関係より} \\[ 5pt ] &\quad \alpha+\beta=-a \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\quad \alpha \beta=b \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\text{また、${\alpha}^{\scriptsize{2}} \ , \ {\beta}^{\scriptsize{2}}$ も与式の解であるので} \\[ 5pt ] &\text{解と係数の関係より} \\[ 5pt ] &\quad {\alpha}^{\scriptsize{2}}+{\beta}^{\scriptsize{2}}=-a \quad \cdots \text{③} \\[ 7pt ] &\quad {\alpha}^{\scriptsize{2}} {\beta}^{\scriptsize{2}}=b \quad \cdots \text{④} \end{align*}

解と係数の関係から①~④式を得ることができました。

求めるのは定数a,bの値なので、①~④式から定数a,bについての方程式を導きます。ただし、式変形してから代入する必要があるので、例題よりもやや難しいですが、慌てずに進めていきます。

問の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \alpha+\beta=-a \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\quad \alpha \beta=b \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad {\alpha}^{\scriptsize{2}}+{\beta}^{\scriptsize{2}}=-a \quad \cdots \text{③} \\[ 7pt ] &\quad {\alpha}^{\scriptsize{2}} {\beta}^{\scriptsize{2}}=b \quad \cdots \text{④} \\[ 7pt ] &\text{③より} \\[ 5pt ] &\quad \left(\alpha+\beta \right)^{\scriptsize{2}}-2\alpha \beta=-a \\[ 7pt ] &\text{これに①,②を代入すると} \\[ 5pt ] &\quad \left(-a \right)^{\scriptsize{2}}-2b=-a \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad a^{\scriptsize{2}}-2b=-a \quad \cdots \text{⑤} \\[ 7pt ] &\text{②,④より} \\[ 5pt ] &\quad b^{\scriptsize{2}}=b \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad b\left(b-1 \right)=0 \quad \cdots \text{⑥} \end{align*}

①~④式から定数a,bについての方程式を2つ導くことができました(⑤,⑥式)。例題と同じように、等式の性質を利用して解きます。

問の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad a^{\scriptsize{2}}-2b=-a \quad \cdots \text{⑤} \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad b\left(b-1 \right)=0 \quad \cdots \text{⑥} \\[ 7pt ] &\text{⑥より} \\[ 5pt ] &\quad b=0 \quad \text{または} \quad b=1 \\[ 7pt ] &[1] \ b=0 \ \text{のとき、⑤より} \\[ 5pt ] &\quad a^{\scriptsize{2}}=-a \\[ 7pt ] &\text{これを解くと} \\[ 5pt ] &\quad a\left(a+1 \right)=0 \\[ 7pt ] &\text{より} \\[ 5pt ] &\quad a=-1 \ , \ 0 \\[ 7pt ] &[2] \ b=1 \ \text{のとき、⑤より} \\[ 5pt ] &\quad a^{\scriptsize{2}}-2=-a \\[ 7pt ] &\text{これを解くと} \\[ 5pt ] &\quad a^{\scriptsize{2}}+a-2=0 \\[ 7pt ] &\text{より} \\[ 5pt ] &\quad \left(a-1 \right)\left(a+2 \right)=0 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad a= -2 \ , \ 1 \\[ 7pt ] &[1] \ , \ [2] \ \text{から} \\[ 5pt ] &\quad (a \ , \ b)=(-2 \ , \ 1) \ , \ (-1 \ , \ 0) \ , \ (0 \ , \ 0) \ , \ (1 \ , \ 1) \end{align*}

定数a,bの組が複数あるので注意しましょう。このような場合、座標と同じ要領で記述します。

定数a,bの組を記述するとき、求めた順で構いません。ここでは、定数aの値の小さい方から順に書き並べています。

2次方程式が複数組の解をもつかどうかの確認

さきほど整理した情報は以下のようになります。

与えられた情報を整理しよう

  • 与えられた2次方程式はx2+ax+b=0。
  • 2つの解α,βをもつ。
  • α2,β2も解にもつ。
  • 求めたいのは、定数a,bの値。

このような条件を2次方程式が満たすのかを確認します。定数a,bの値は複数組ありますが、2組だけ確認しておきます。余裕があれば、他の組み合わせも確認してみましょう。

2次方程式が複数組の解をもつのかどうかの確認 1⃣

\begin{align*} &\text{$a=-2 \ , \ b=1$ のとき、与式は} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}}-2x+1=0 \\[ 7pt ] &\text{となる。このときの解は} \\[ 5pt ] &\quad \left(x-1 \right)^{\scriptsize{2}}=0 \\[ 7pt ] &\text{より} \\[ 5pt ] &\quad x=1 \quad \text{(重解)} \\[ 7pt ] &\text{これより $\alpha \ , \ \beta$ は} \\[ 5pt ] &\quad \alpha =1 \ , \ \beta=1 \\[ 7pt ] &\text{となり、このとき ${\alpha}^{\scriptsize{2}} \ , \ {\beta}^{\scriptsize{2}}$ は} \\[ 5pt ] &\quad {\alpha}^{\scriptsize{2}}=1 \ , \ {\beta}^{\scriptsize{2}}=1 \\[ 7pt ] &\text{となる。} \\[ 5pt ] &\text{したがって、$a=-2 \ , \ b=1$ のとき} \\[ 5pt ] &\text{ $\alpha \ , \ \beta$ を解にもつ $2$ 次方程式} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}}+ax+b=0 \\[ 7pt ] &\text{は ${\alpha}^{\scriptsize{2}} \ , \ {\beta}^{\scriptsize{2}}$ も解にもつ。} \end{align*}

もう1組についても確認します。

2次方程式が複数組の解をもつのかどうかの確認 2⃣

\begin{align*} &\text{$a=1 \ , \ b=1$ のとき、与式は} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}}+x+1=0 \\[ 7pt ] &\text{となる。このときの解は、解の公式より} \\[ 5pt ] &\quad x=\frac{-1 \pm \sqrt{3}i}{2} \\[ 7pt ] &\text{これより $\alpha \ , \ \beta$ は} \\[ 5pt ] &\quad \alpha =\frac{-1-\sqrt{3}i}{2} \\[ 7pt ] &\quad \beta=\frac{-1+\sqrt{3}i}{2} \\[ 7pt ] &\text{(逆でも良い)} \\[ 7pt ] &\text{となり、このとき ${\alpha}^{\scriptsize{2}} \ , \ {\beta}^{\scriptsize{2}}$ は} \\[ 5pt ] &\quad {\alpha}^{\scriptsize{2}}=\left(\frac{-1-\sqrt{3}i}{2} \right)^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ] &\quad {\beta}^{\scriptsize{2}}=\left(\frac{-1+\sqrt{3}i}{2} \right)^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ] &\text{整理すると} \\[ 5pt ] &\quad {\alpha}^{\scriptsize{2}}=\frac{-1+\sqrt{3}i}{2} \\[ 7pt ] &\quad {\beta}^{\scriptsize{2}}=\frac{-1-\sqrt{3}i}{2} \\[ 7pt ] &\text{となる。} \\[ 5pt ] &\text{したがって、$a=1 \ , \ b=1$ のとき} \\[ 5pt ] &\text{ $\alpha \ , \ \beta$ を解にもつ $2$ 次方程式} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}}+ax+b=0 \\[ 7pt ] &\text{は ${\alpha}^{\scriptsize{2}} \ , \ {\beta}^{\scriptsize{2}}$ も解にもつ。} \end{align*}

2次方程式がα,βを解にもち、さらにα2,β2も解にもつのは、解の組み合わせが同じになるときです。もちろん、このようなことは特定の係数の場合でしか成り立ちません。

結局、複数組の解をもつわけではないということです。文字だと解が複数組あるように感じますが、具体的な数で考えてみるとそうではないことが分かります。

2次方程式の2つの解は、ただ1組だけである」ということで、最初に違和感を感じたのは間違いではなかったということです。

Recommended books

紹介するのは、高校数学の授業についていけずに焦っている人向けの教材です。授業についていけない原因は色々と考えられますが、その中でも中学で学習した内容を理解していないことが大半を占めているかもしれません。

高校1年生の場合、数学の内容はほとんどが中学の応用みたいなものです。ですから、予習が進まない、授業についていけない、などがあれば、中学の学習内容を確認することをお勧めします。確認すれば分かりますが、意外と理解していなかったことに気付くはずです。

高校2,3年生にとっては、今さら中学の復習なんかやってられないと思うかもしれません。しかし、理解できない箇所が出てくれば、嫌でも前の単元に戻らなければなりません。そうやって単元をさかのぼっていくと、結局、中学内容に行き着くことも少なくありません。

特に、苦手科目については効果的だと思います。高校での学習に行き詰っている人は、変なこだわりを捨てて、中学内容まで戻ってみると良いでしょう。案外、もっと早く取り組んでいれば良かったと思うかもしれません。

オススメ-『高校入試「解き方」が身につく問題集』シリーズ

学習内容の理解の深度を知るには、問題を解くことが一番分かりやすいです。レベル別に問題を解けば、理解度をより詳細に知ることができるでしょう。このことは、中学内容だろうと高校内容だろうと変わりません。

『高校入試「解き方」が身につく問題集』シリーズは、高校入試対策用の問題集になりますが、頻出の問題を扱っているので、重要事項やその使い方を効率良く確認することができます。

入試レベルなので応用的な問題が多いですが、高校の授業についていくにはそのくらいの理解度が必要です。つまり、高校数学についていけないとすれば、中学数学の応用レベルに達していない箇所が足枷になっている可能性が高いです。

目安としては、高校入試レベルの問題が8割以上解けることを目標にすると良いでしょう。8割取れるようになれば、高校の学習において、多少の躓きはあっても遅れを取ることは少ないでしょう。

「暗記では解けない問題の解き方」を身につける!

★「出題頻度が高い」&「解き方にコツがある」問題をマスターして得点アップ!

公立高校入試の問題は、難度の幅が広く、暗記で解ける問題と解き方(考え方)が必要な問題があります。一部の問題は演習量よりも、解き方を押さえてから演習したほうが効率的に点数を上げることができます。本書で選んだ問題をマスターすることで、入試の得点アップにつながります。

★徹底的に「解き方」に焦点を当てた解説!

「例題」「解き方チェック問題」「実践問題の解答解説」のすべてで「解き方」のチェックポイントに沿った解説をしています。

数学だけでなく、他の科目もあります。苦手科目だけでも取り組んでみると良いでしょう。

ここで紹介する問題集に限りませんが、ページ数の少ない教材を選んで周回しましょう。あまり時間を掛けられないので、短期間で集中的に済ませる方が効率的です。

大事なことは、自分に合った教材を徹底的に活用することです。どの教材を選ぶにしても、自分の目で中身を確認し、納得してから購入することが大切です。

さいごにもう一度まとめ

  • 2つの解の関係をもとにした係数の決定では、解と係数の関係を書き出そう。
  • 解と係数の関係から得られた式から、解を消去して、求めたい係数についての式を導こう。
  • 2次方程式や解が複数出てきたら、情報を整理して対応関係を把握しよう。