物理のヒント集|ヒントその4.流水を進む船の速度

10/24/2018物理速度

物理のヒント集

第4回の物理のヒント集は、流水を進む船の速度についてです。速度は向きと大きさをもつベクトル量なので、特に向きに注意しないと大変なことになります。

流水を進む船の速度

速度の合成を扱った問題に、流水を進む船の速度を求める問題があります。問題文をしっかり読み、意図を正しく理解しないと、見当外れな数値が出てきてしまいます。

【問】静水上を速さ 10[ m/s ]で進むことのできる船が、流れの速さ 6[ m/s ]、川幅 100[ m ]の川を横断する。船が岸に対して直角に進むとき、岸に対する船の速さを求めよ。

流水を進む船の速度を求めてみよう
メガネ先生

メガネ君、解けるかのぅ?

メガネ君

船が岸に対して直角に 10[ m/s ]で進むと、それと同時に川の流れによって下流に 6[ m/s ]で流されてしまいます。

流水を進む船の速度メガネ君の解答
メガネ君

ですから、求める船の速さは、2辺 10,6 をもつ直角三角形の斜辺の長さを求めれば良いので、$2 \sqrt{34} \ [m/s]$ となりますっ!(ドヤァ)

メガネ先生

頑張って答えてくれたようじゃの。じゃが残念ながら間違いじゃっ!

メガネ君

何ですとっ!

自分の解答に自信満々だったメガネ君。しかし、あっけなく撃沈。さて、どこが間違っているのでしょうか。

問題文の解釈に気を付けよう

メガネ君は「船が岸に対して直角に 10[ m/s ]で進む」と話していましたが、果たしてそうでしょうか?

もう一度、問題文を確認してみましょう。

【問】静水上を速さ 10[ m/s ]で進むことのできる船が、流れの速さ 6[ m/s ]、川幅 100[ m ]の川を横断する。船が岸に対して直角に進むとき、岸に対する船の速さを求めよ。

問題文では「船が岸に対して直角に進むとき」と言っています。ここの解釈の仕方によって明暗が分かれてしまいます。

「船が岸に対して直角に進むとき」とは、船が岸に対して直角に船首を向けて進むときではありません。船首は岸に対して直角でも、船が斜めに流されていれば、岸に対して直角に進むとは言えません。

岸に対して直角に進もうとしても、実際はそうならない

メガネ君が考えた進み方の場合、図のように、船首が岸に対して直角に進もうとしても、船は下流の方に流れてしまいます。

実際の船の進路は、図のように斜めになるので、船が岸に対して直角に進むことはありません。

流水を進む船の速度メガネ君の解答

流水の影響を踏まえて、船が岸に対して直角に進むときを考えなければなりません。そのためには、上流の方に船を進めなければなりません

上流の方に船を進めたとしても、それと同時に流水の影響で下流に流されてしまいます。ですから、実際は上流の方に進まずに、岸に対して直角に進んでいくことができます。

問題文の意図を正しく読み取ろう。

正しく作図しよう

メガネ君の作図では上手くいかないので、作図しなおしてみましょう。

船の進む向きが岸に対して直角となるには、静水時の船の速さ流水の速さが平行四辺形の一辺になるように作図します。このとき、10,6 が平行四辺形の辺になるので、辺の長さは 10:6 = 5:3 となるようにします。

流水の中を岸に対して直角に進むときの図

正しい作図では、斜辺が 10、他の一辺が 6 の直角三角形ができます。残りの一辺が求める船の速さに相当します。

解答例

三平方の定理より
\begin{equation*} \quad \sqrt{10^{2} – 6^{2}} = 8 \end{equation*}
よって、岸に対する船の速さは $8 \ [ \ m/s \ ]$

三平方の定理を利用して解くと、求める速さは 8[ m/s ]となります。なお、図から 3:4:5 の直角三角形ができていることに気付けば、比を利用して解いても良いでしょう。

さいごにもう一度

メガネ先生

どこで間違ったか気付いたかの?

メガネ君

はいっ! ケアレスミスですが、問題の意図を正しく理解できていませんでした。勝手な思い込みに注意したいですっ!

メガネ先生

たしかにケアレスミスじゃが、こういうことはどの問題でも起こりうるんじゃ。

メガネ先生

そうならないためには、問題文をただ眺めるのではなくて、読み解いていく訓練をしてほしいの。

メガネ先生

あとは用語の定義を文言通り覚え、正しく解釈することが大切じゃ。定義をいい加減に覚えたり、解釈したりすると、問題の意図を読み違えやすくなるんじゃよ。

メガネ君

そうですね。まずは用語の定義を正しく覚えないといけませんね。うろ覚えになっているものが多いので、もう一度確認しますっ!

メガネ先生

ちなみに、問題では「速度」ではなく「速さ」が使われていたようじゃが、ちゃんと違いが分かっておるかの?

メガネ君

速さは大きさだけのスカラー量で、速度は向きと大きさをもつベクトル量でした。次こそは間違えませんよっ!

メガネ先生

失敗から学べば良いんじゃよ。次回も楽しみにしとるよ。

物理・物理基礎のオススメ本

おすすめ その1

  • 宇宙一わかりやすい高校物理(力学・波動)
  • 宇宙一わかりやすい高校物理(電磁気・熱・原子)

物理入門者や、物理を苦手にしている人に導入書としておすすめです。教科書が学習の中心であるべきですが、どうしても教科書で理解できない箇所が出てきたら本書で補完すると良いでしょう。イラストが豊富なので独学でも使えます。

分冊になっているので、力学と波動以外の分野はもう1冊の方になります。

おすすめ その2

  • 秘伝の物理講義[力学・波動]
  • 秘伝の物理講義[電磁気・熱・原子]

YouTubeで完全公開されている講義を再現したのが本冊です。また、別冊の「動画テキスト兼ポイント集」で物理の「わからない」を解決できます。公開模試、学校平均点全国No.1を取らせた実力派教師の講義は一読の価値あり。独学にも向き、標準以上も対応可能です。

分冊になっているので、力学と波動以外の分野はもう1冊の方になります。

おすすめ その3

物理教室(河合塾series)

所有していますが、これ1冊で基礎から応用まで十分対応できます。理系志望者は一読してほしいのが本書です。

物理の内容が分野ごとに章立てされており、各分野ごとに筋道を通した理解ができます。網羅性が高いのは当然ですが、「物理的な見方や考え方」が自然に身につくように丁寧に解説されています。

また、入試を意識して問題を多く扱っているのも特徴で、問題集代わりにも使えます。基礎を身に着けたい人は参考書として、応用力を養いたい人は問題集として、実力に応じて使いこなせる構成になっています。

問題集の『物理のエッセンス』は有名ですが、同じ河合塾seriesなので相性も良いです。

物理速度

Posted by kiri