物理のヒント集|ヒントその2.v-tグラフの読み取り方

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物理のヒント集

第2回の物理のヒント集は、v-tグラフの読み取り方についてです。物理だけでなく、理系科目ではグラフの扱いに慣れていなければとても苦労します。

v-tグラフを正しく読み取ろう

等速直線運動や等加速度直線運動では、v-tグラフをよく扱います。次のv-tグラフから物体の運動の様子を読み取ってみましょう。

【問】図のv-tグラフで表される運動を説明しなさい。

v-tグラフの一例
ある運動のv-tグラフ
メガネ先生

メガネ君、説明できるかの?

メガネ君

図のv-tグラフから、物体が0[s]~t1[s]の間で正の向きに進んだ後、t1[s]~t2[s]の間で引き返して負の向きに進んだ様子が読み取れます!(ドヤァ)

メガネ先生

頑張って答えてくれたが、間違いじゃっ!

メガネ君

何ですとっ!

自分の解答に自信満々だったメガネ君。しかし、残念ながら不正解。どこが間違っているのかを考えてみましょう。

運動の向きは速度の向きに対応

物体は、その速度が正であれば正の向きに運動し、その速度が負であれば負の向きに運動します。ですから、速度の向きが分かれば、物体の運動の向きが分かります。

それに対して、加速度の向きが分かったとしても、それだけでは物体の運動の向きを判断することはできません。つまり、運動の向きは、速度の向きに対応していることが分かります。

運動の向きは、加速度ではなく、速度の向きに対応する。

グラフの傾きは速度ではなく加速度

v-tグラフでは、横軸が時刻t[s]、縦軸が速度v[m/s]です。そのようなv-tグラフにおいて、傾きが示しているのは、物体の速度でありません。

傾きが示しているのは、物体の速度の変化率です。速度の変化率とは、言い換えると加速度のことです。ですから、v-tグラフの傾きの正負では加速度の正負が分かるだけで、運動の向きを判断することはできません。

v-tグラフの傾き
v-tグラフの傾きは加速度

ただ、加速度の正負によって、物体の運動の様子をいくらか把握することはできます。

グラフの傾きが正であれば、速度が大きくなっていく(加速する)運動だと予想できます。それに対して、グラフの傾きが負であれば、速度が小さくなっていく(減速する)運動だと予想できます。

速度の向きはt軸に対するグラフの位置で判断しよう

物体の速度の向きは、v-tグラフのt軸に対する位置で分かります。つまり、v-tグラフが t軸の上側にあるか下側にあるかで速度の正負が決まります。

v-tグラフがt軸の上側にあれば、グラフから得られる速度は正の数になります。また、v-tグラフがt軸の下側にあれば、グラフから得られる速度は負の数になります。

先ほどのv-tグラフを見ると、時刻t1[s]の前後でグラフが折れ曲がっています。右上がりのグラフと、右下がりのグラフのどちらともt軸よりも上側にあります。ですから、正の速度がつねに得られることが分かります。

v-tグラフの一例
v-tグラフはつねにt軸より上側にある

グラフをもう少し詳しく見てみると、時刻0[s]~t1[s]の間では、正の速度v0[m/s]で出発し、正の速度v1[m/s]まで加速したことが読み取れます。

また、時刻t1[s]~t2[s]の間では、正の速度v1[m/s]から正の速度v2[m/s]になるまで減速したことが読み取れます。

あくまでも減速しただけで、時刻t1[s]~t2[s]の間であっても、物体は正の向きに運動しています。

v-tグラフから速度の向きを知る
グラフとt軸との位置関係に注目しよう

以上のことから、時刻t1[s]の前後で加速度の向きが正から負へ変わりましたが、運動の向きは正の向きのままであることが分かります。

したがって、時刻0[s]~t2[s]の間では、物体は、負の向きに運動することは一度もなく、つねに正の向きに運動しています。

さいごにもう一度

メガネ先生

v-tグラフをどのように見れば良いか分かったかの?

メガネ君

はいっ! グラフの傾きから分かるのは加速度の向きで、速度の向きとは無関係だと分かりました。

メガネ君

それに、運動の向きは速度の向きで判断しなければならないということも分かりました。

メガネ先生

速度の向きはどうやって読み取れば良いのじゃ?

メガネ君

速度の向きは、グラフがt軸よりも上側にあるのか下側にあるのかで判断しますっ!

メガネ先生

正解じゃ。次は大丈夫そうじゃの。

メガネ君

次は間違えませんよっ!

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